噛みつく安室と妬く赤井 ページ12
◇
〈お前は…!〉
明らかに怒り声の安室さんに慌ててスマホを取り戻す。あっさり返されたスマホに驚きつつもこれ以上邪魔されないように部屋から追い出す。
〈あ、あの、安室さん?〉
〈貴方はあの男とどういう関係だ…〉
「(敬語外れてる…。そりゃあ疑うわよね。)」
まったく、どうしたものか。
〈一晩一緒にいるぐらい仲がいいのか〉
〈…お酒を一緒に飲んでて私が寝落ちただけですよ?〉
なんだかあらぬ誤解を受けている気がする…。赤井の顔が好みだと言ったがそういう関係は一切ない。ないけど。いや、キスされた云々はこの際置いておこう。火に油を注ぐ案件でしかない。
〈…では、無事な姿を確認させてください。〉
〈無事って、過保護すぎでは?〉
〈異論は認めません。あなたの事はベルモットから頼まれているので〉
「ふふっ、素直じゃない人」
心配してるのはベルモットだけじゃないでしょ?
むしろ、貴方の方が__
〈ユエさん?聞いていますか?〉
〈ええ、聞いていますよ。…では今からホテルに戻りますからいつもの時間ぐらいに来てください。待ってますから〉
〈わかりました。必ず向かいます。寄り道せずちゃんと帰るんですよ。いいですね?〉
〈心配しなくても大丈夫ですよ。ではまた。〉
終わりそうもないお小言に、少し矢継ぎ早に電話を切る。
「中々入れ込まれているようだな」
「そう見える?」
「ああ。妬けてしまうぐらいには…」
途中から部屋の外で聞いていたのだろう。部屋に入るなり赤井は面白くなさそうに私の髪を撫でる。
「ふふっ、貴方のそういう顔は初めてみるわ」
「…ホテルまで送ります。」
いつもより余裕のない顔の赤井も沖矢昴として逃げる赤井も物珍しく、私は笑いながら後を追った。
◇
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ろーず - 続編おめでとうございます。これからも楽しみにしています。 (2018年6月12日 23時) (レス) id: 67f7e97b5c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:朱狐 | 作成日時:2018年6月12日 2時