しろくてあかいひと (ページ32)

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その一言ではページ32

赤井side

シェリー(偽物)が逃げたのを確認し、沖矢に変装し直す。
だが、その時も心は焦りでいっぱいだった。

｢(ユエ…)｣

｢昴さん。大丈夫だから落ち着いて？インカムが切れただけで連絡はできるんでしょ？｣

｢ああ、｣

ボウヤになだめられてもどうにも落ち着かない。

心配で心配でたまらなかった。

｢秀ちゃんがこんなに焦るなんて、そのユエちゃんだったかしら？その子が本当に大切なのね｣

大切＿なのは事実だ。

だけどその一言で片づけるのは惜しいと思ったのも事実だった。

｢では、失礼して彼女を迎えに行ってきます｣

｢うん。昴さんありがと！｣

｢いってらっしゃい～。今度是非紹介してちょうだいね！｣

｢はい、必ず｣

挨拶を済ませ、早足で彼女を置いてきた部屋に向かう。客はもうほとんど避難したようで人の気配はなかった。

彼女の部屋を見つけるとノックもせずに勢いで扉を開いた。思いのほか大きな音で開いた扉に目もくれず、目の前にいた彼女を腕に閉じ込めた。

暖かな体温にやっと安心できた。

小さく腕に収まる彼女にいつからこんなに想うようになったのか

｢お前まで失いたくないんだ｣

今度は必ず守るから、

どうかそんな顔をしないでくれ

◇