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「……保健室？」
目を覚ますと、保健室のベッドにいた。ゆっくり起き上がりながら、なんで保健室にいるんだっけ？ と思考を巡らせる。
そうだ元バレー部、アユンの強烈なスパイクを顔面で受けちゃったんだった。
鼻血もそうだけど、顔面で受けるもんだから、大事を取って6限目は保健室で休むことになったんだった。
「あら、起きた？」
「はい」
私が起きたことに気がついた先生がカーテンを少しあけ様子を伺う。
「どう？ 具合は」
「なんとか」
「そう、良かった。今日は安静にしてるのよ」
「はい」
「今、友達が荷物取って来てるから、もう少し待ってなさい」
友達？ 誰だろ、アユンかな。
「先生ちょっと職員室に行くんだけど、大丈夫？」
「はい」
「友達戻ってきたら帰っていいから」
そういうと先生はそさくさと保健室を後にした。
アユンが来るまでもう少し横になってよ。
再びベッドに横になり瞼を閉じた。
「起きて、友達迎えに来たわよ」
次に目を覚ましたのは先生の呼びかけだった。
「アユン、ごめん。思いっきり寝て――」
カーテンを開いた先にいたのはアユンじゃなくて、イドンヒョクだった。
「え、イドンヒョク……？」
「おはよ、体調大丈夫？」
「大丈夫だけど……部活は？」
「終わったよ、もう5時だよ」
「えっ！？」
慌ててスマホを確認すれば、イドンヒョクの言う通り5時過ぎていた。
「キムアユンに頼まれて迎えに来た」
「アイツ……」
「大丈夫？ 立てる？」
「うん」
イドンヒョクは私のリュックを持ち、手を差し伸べ立つのを手伝ってくれた。
「ありがとう」
「心配だから送るよ」
「え、悪いよ」
「いいから。じゃ、帰るね先生」
「はーい、気をつけてね」
そのまま手を引かれ保健室を後にする。
「Aちゃん大丈夫？」
「うん、もう大丈夫だよ」
意外にもイドンヒョクは心配性なのか、私の心配ばかりしてくれる。
「明日……無理して来なくていいから」
繋がれたままの手が、少し強く握られる。
「ふふ、心配しすぎ。もう大丈夫だから、明日行くよ」
「ありがとう」
とっくに学校は出て、もう少しで駅だと言うのに手は繋がれたままだった。
「ね、くまちゃん？」
「ん？」
「その、手、離してくれない？」
「だめ、離したら転ぶでしょ」
「子供じゃないんだから転ばないよ」
「だーめ」
思えばこの時からイドンヒョクは、私に対して過保護になった気がする。
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作者名：砂糖と塩 | 作成日時：2023年5月18日 8時
