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「さっき俺と目が合ったよね」
やっぱり目が合ってたんだ。――寝起きの回らない頭でぼうっと考えているせいで、返事がないことに焦り出すイドンヒョク。
「ね、聞いてる？ つか起きてる？」
「ごめん、ごめん。起きてるよ」
「……俺のこと知ってる？」
怪訝そうな顔で訊いてくる。
「え？ なんで？ 知ってるよ、同じクラスのイドンヒョクでしょ？」
安心したのか目に見えて分かりやすくほっとする彼。
まだ少ししか言葉を交わしてないのに、ころころと表情を変えるイドンヒョクが面白くてふふっと笑いが零れた。
「なんで笑うんだよ」
「面白くて」
「面白ポイントあった？」
「あった」
「Aさんってツボ変だね」
「よく言われる。で？ 何の用？」
「だから、Aさんと話したくて起きるの待ってたんだよ」
「あ、そうだっけ……でもよくここにいるって分かったね」
「あとつけてきちゃった♡」
「……はあ？」
イドンヒョクって不可解な子かも。
「ええ……なにそれ」
「そんな顔しないでよ。あーあ、ドンヒョク傷ついた。Aさん罰としてスマホ出して」
「……？ はい」
「うん、良い子。まあ、言っといてなんだけどもう少し警戒したほうがいいんじゃない？」
「じゃあ返して」
「はは、もう遅いよ」
すると、自分のスマホも取り出しゴソゴソいじってる。
「……なあ、パスワード掛けてないの？」
「うん、めんどいし」
「後ですぐに掛けな」
「えー……パスワード覚えられない」
「なら０６０６って登録しなよ」
「何その数字」
「俺の誕生日……はいっ、Aさんのカトクに俺のこと登録しといたから」
これが罰？
「フル……サン？ なにそれ」
友達一覧のところには「FULL SUN」と新しく登録されていた。
「俺のこと」
「太陽なの？」
「あだ名がヘチャンだし、俺太陽みたいでしょ？」
「どっちかって言うとクマぽい気がする」
「意外と口答え多いね、ほら貸して」
またスマホを奪い取られる。
「これでい？」
──
名前がFULL SUNから変わっていた。
「私の可愛い……クマ？」
「そう、Aさんのクマ、ドンヒョクくん」
「なにそれ」
またツボって笑いが止まらない。
「そんなに笑う？」
「ごめんごめん」
「じゃ、ほらパスワード掛けろ」
この日からスマホにパスワードは掛けられ、しっかり彼の誕生日にさせられた。
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作者名：砂糖と塩 | 作成日時：2023年5月18日 8時
