12 ページ12
.
練習試合が終わったのに、イドンヒョクの手首には私があげたオレンジ色のヘアゴムがあった。
「ヘチャナ、そのヘアゴムどうしたの？ 最近ずっとしてるけど」
「んー？ おまもり」
なんて会話が教室で聞こえたりして心臓に悪かったりする。その度に知らないふりをするけど、私に向けて言ってるようでいたたまれない。
「『おまもり』だって。ラブラブだね」
「やめて」
そしてアユンにからかわれるまでがセット。
「でも噂流れてるの知ってる？」
「なにそれ、知らない」
「イドンヒョクに彼女が出来たって噂」
「え、そうなの？」
「いや、これアンタのことだって」
「え？ わたし？」
「そうだよ。この前の試合のあとぐらいからだよ」
「まじ？」
「まじ」
かなりまずいんじゃない？ この状況。
「A〜！ イドンヒョクと付き合ってるんだって？」
放課後のクラスの子たちとの井戸端会議。話題は自然とあの噂で。
「いや、付き合ってない……」
「え、嘘」
「嘘じゃないし……」
「だって練習試合の時いちゃついてた聞いたよ」
「い、いちゃつく？！ いちゃついてないよ！」
衝撃の発言にすぐさま否定したのに、隣に座るアユンが「いちゃついてたね」とニヤニヤしながら私を小突く。
「してないってば」
「でも、応援は行ってるんでしょ」
「それは……イドンヒョクに誘われて」
「ははーん、そういうことね」
ほかの子も囃し立ててくるから恥ずかしくなる。
「アユンが思うに、イドンヒョクがAのこと狙ってると思うんだよね」
「え、まじ？ あのチャラ男が？」
「だって、アユン一緒に居たけど、あいつAのこと好きって感じだったもん」
「Aちゃんにも春が来たかあ」
「ふたりとも恋人同士みたいだったしぃ」
「違うってば！」
井戸端会議は、盛り上がるだけ盛り上がって解散した。
噂のせいでイドンヒョクと顔合わせずらいな、なんて思っていたら昇降口で鉢合わせちゃった。
「Aちゃん！」
どうしよう気まずい。
「ひとりで帰るの？」
「うん」
「……ちょっと待ってて」
「？」
すると、イドンヒョクは誰かに電話をかけ「ごめん〜俺用が出来たから先帰るわ」そう言って電話を切った。
「ってことで、俺と帰ろ」
「え、でも、誰かと帰るんじゃなかったの？」
「いつもの奴らだから大丈夫。それよりもアイちゃんをひとりで帰す方が問題」
「あ、ありがとう」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 949人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：砂糖と塩 | 作成日時：2023年5月18日 8時
