第28幕 ページ31
「おーい矢沢ぁ一緒に飯食おうぜー」
「おーう!」
群れなど必要ない。
もう十余年孤高を貫くと、自ら突き放す手間もいらず寄り付くような物好きは減っていった。
面倒が省けるのは好都合だ。
だがしかし、どうしてもそれが出来ない状況ができてしまった。
五人一組で一年を突破しなくてはならない。
2年MS組の枠は4チーム、生徒数20名までという狭き門。
四つのスター枠を押さえて組み込む事ができる可能性は…未知数。
だが俺は必ずミュージカル学科に入らなければならないんだ。それはきっと俺自身のためになる。
四人のお荷物など眼中にない。ただ上を見て技を磨けば良い。
俺一人の力で…
「えっと、と…常磐田、君?あの、他のクラスの人が呼んでて…」
全く顔を覚えていない奴から声を掛けられ、そいつの指差す方を確かめると例のあいつらがいた。
「…知らん」
懲りずにニッカニカ愛想笑いして手を振る奴と俺を睨み付けている奴。
「つ、次が専攻の時間だから…一緒に行こうって言って…」
「失せろ」
「ごっごめんなさい!」
弱々しく奴等のいる方に行ったと思ってスマホに目を向けた。
適当にネットニュースを眺めていると、教室のドアが勢いよく開けられる音がした後足音が近付くのがわかった。
聴覚だけ傾けていたはずの俺の目の前には、メンチを切るような奴の顔があった。
「おいてめェ…ついてこい。旭、こいつの弁当と荷物まとめて持ってけ!」
「ええ?!」
「さっさとしろ!」
「は、はいっ!」
一体急に何の奇行に走っているのか理解が追い付かなかったが、とにかく目の前の男の腕をつかんだ。
「離せっ何をする」
「黙って付いてきやがれクソ野郎!」
「あ"あ?!」
俺も人の事はいえないが、なんという口の悪さだ。
そうしてたどり着いた先は、一つのレッスン室…次の授業時間でチームが使う場所だった。
「とっとと座れ。こっから出ようとしたらぶん殴る」
「なんなんだお前らは…」
出入口前には二人が陣取り、それに向かい合って座り込んだ。
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作者名:和澄紫郎 | 作成日時:2020年1月24日 13時