第24幕 ページ27
景君の流れにほだされてしまいすっかりいい忘れていたけど、やっと本題を持ち出す。
「忘れるところでした！今日は一応、景君に高校進学の報告で来たんです」
「おおっ待ってたよ！その様子だと無事第一志望ってとこか」
「はい！」
勉強のことのみならず、ちょっとした精神的な悩みも何もかも、全て受け止めて話を聞いてくれて、本当に助けになった。
景君こそ高校一年目で大変な事もあっただろうに、感謝するばかりだ。
「旭はこの辺りの高校なのか？」
傍らで俺達の会話を聞いていた零さんが興味深そうに尋ねた。
「はい。綾薙学園です」
「ああ、ミュージカル学科や音楽・芸能関係の学科がある所だよな」
「ええ、俺は先日の入科試験で、ミュージカル学科候補生として在席しています」
ミュージカル学科、と言い切らず候補生と付け加えたことに二人とも疑問符を打った。
「ミュージカル学科というのは正式には2年生かららしく…1年目は候補生としてテストステージを通過し、100人いる志望者の中から選抜された20人が2年目から専攻科目を受けることが出来るんです」
ミュージカル学科の実態に、景君も零さんも驚いたように声を漏らした。
無理もない、あの学舎の中でそれほど激しい競争社会が繰り広げられているんだ。
今後の事を憂えるだけで肩が凝りそう…
「だけど、俺は旭の力を信じてる。それに絶対諦めたりしない強い心もあるってな！」
「僕も旭を応援しよう。ヒロだけじゃ力不足なこともあるかもしれないから、これからは僕も力になろう」
「言ったなゼロ！」
心強い二人の言葉になんだか背中が暖かくなる。
零さんはさっき言った通りに「いつでも相談していい」と連絡先を交換してくれた。
「ありがとうございます、零さん！」
これだけ頼れる先輩が居るなら、この先ももっと頑張っていける…頑張りたいと思えてきた。
その後も幼馴染や高校生としてあれこれと会話を繰り広げて、夕方の景色に変わるまで楽しく平和な時間を過ごしていた。
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作者名：和澄紫郎 | 作成日時：2020年1月24日 13時
