第16幕 ページ18
昼休み、5限が専攻の時間でそれぞれチームの稽古場へ移動するのに、迷って遅れたりしたらメンバーに申し訳ないだろうななんて思って、早めに行くことにする。
弁当もそこで食べよう。
「一夜、早めに稽古場に行こうと思うんですが一緒に行きますか?」
「あーいや悪い!生活委員で集まんなきゃなんないみたいで」
午前に決めた委員会で早速召集がかかたらしい。
一夜は筆箱と念のため昼食を持って、俺に手を振り教室を出ていった。
俺も最低限の荷物と、次の時間で使う教室までの校内図を頼りに廊下へ踏み出した。
校内が広いから教室も沢山あって、目が痛くなってくる。
ひたすらに廊下を練り歩く間、通りかかる生徒から口々に言葉が漏れているのが聞こえる。
「あいつミュージカル学科か…」
ミュージカル学科生だけが付けるエンブレムがあるからか、妙に注目されている気がする。
なるべく誰とも目を合わせたりしないように校内図に集中しているふりをして下をむいて歩く。
「君」
「はいっ」
前から突然声を掛けられて、身が固まる。
周囲が次第にざわざわしだして、緊張感のようなものが走る。
そこにいるのは、眼鏡をかけているミュージカル学科の人と…女子?!
ブレザーは同じだけど赤いリボンにスカートを履いた人が並んでいる。でも…胸はあまりないような。
「何みてんの」
「いえすみません!」
あれ…以外と声が低い…というか普通に男の人の声だ。
「…」
眼鏡の方の人が静かに俺を見下ろしている。
「…前を見て歩かないと怪我しますよ。君は新入生ですね、もし迷っているようでしたら案内しますよ」
「へ…あ、ありがとうございます!」
お礼を言うと、俺が持っていた紙を覗きこんで「ここなら…」と二人揃って踵を返した。
本当に案内してくれるみたいだ。助かった…
「本当にありがとうございます…あの、もしかして先輩ですよね」
「ええ…2年MS組の五十嵐潤と言います。彼は雨宮秀里」
眼鏡をかけている方の五十嵐先輩が、女子のような格好の雨宮先輩を紹介してくれるも、本人は見向きもせずスマホを見ている。
「ちなみに僕らは生徒会でもあるので何かあれば相談も乗りますよ」
「助かります。俺は藤本旭です」
それから暫く歩いていくと、いつの間にか暗がりにいてそのなかに一つの扉が佇んでいた。
「ここが目的地の教室ですね…」
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作者名:和澄紫郎 | 作成日時:2020年1月24日 13時