第13幕 ページ15
「若様、姫路様がお訪ねになっております」
朝の玄関掃除をしていたであろう椿が俺の部屋の前の縁側から声をかける。
「通してあげてくれ」
「承知いたしました」
檜と足袋が微かに擦れる音が遠ざかると、今度はとんとんと歩んでくるのがわかる。
「うっちゃん開けるよー」
「ああ、いいぞ」
制服姿でどこか浮かない顔の姫路がそこにいた。
適当な場所に座らせた後、俺は支度を続けながら姫路の話を聞いた。
「なんだか、悪い予感がするんだ…」
俺の着替える音だけがする部屋のなかで、姫路はぽつぽつと不安の言葉を連ね出す。
昨日の大阪の独断は冷静になれば長浜の言った通り了承できるような結果ではなかった。
彼は確かに発言力の強い人間ではあれど、あんな勝手をするような奴ではないはずだ。
なのに、どうして…
「どうして陽くん、僕らを頼ってくれないのかな」
「…」
一体どこか頼りない所でもあるのか？大阪一切教えてくれない。
俺たちに対することも、大阪自信のことも。
確かに大阪は他人を信用しきらない節はあるけれど…
「ご、ごめんねうっちゃん！このままじゃ他の生徒たちにまで変な空気伝播させちゃって…ダメだね」
お互い似たように眉を潜めたまま無理に笑っているのを理解しあう。
「お待たせ、姫路」
燕尾の皺を整えて、鞄を持ち上げる。
「うん、行こっか！」
3年になってから俺と姫路は家で身支度した後、通学路の途中にある飲食店で一緒に朝食を済ませようと言っていた。
「今日はどこ行く？」
「実はあまり食欲がないからな…ファストフードでもいいか？」
「うん！一緒ならどこでもいいよっ」
気分を晴らすように俺の腕に飛び付いてきた姫路と歩幅をあわせ、学園近くのニンジャバーガーを目的地に向かった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：和澄紫郎 | 作成日時：2020年1月24日 13時
