第12幕 ページ14
朝が来た。
っていっても、一般的にはまだ深夜と言われる午前3時。
どれだけ寝ようと思っても、ショートスリーパーの俺はだいたいこれくらいの時間には目が覚めて二度寝もしたことがない。
流石にかき…一夜はまだぐっすりだ。
とりあえず覚めてしまったものは仕方ないから、すぐ登校できるように準備を進める。
あと俺の持ってきた荷物のほうも整理しておこう。
そういえば…結局まだあの先輩の名前知らないな。
あっちの怖そうな先輩の方は大阪さんっていったよな。
確か会社の跡継ぎで既に家の仕事にも関わってるってニュースで聞いた気がする。
それにしてもミュージカルで人が救えるかってどういう意味だったんだろうか。
すごく冷たそうで一見俺の事なんて興味がなさそうに見えたけど…俺が話したことはしっかりと聞いてくれていたし、なんていうか色々なものを閉じ込めているみたいに感じた。
まぁ学園のトップにいて家でも仕事してるなんて大変なんだろうな。
「あ…」
顔を上げたら、カーテンの隙間から月明かりが覗いた。
そして遥か彼方から、朝がやってこようとしているのが見える。
いい景色だ。
俺はなるべく一夜を起こさないようにベランダへ出る。
涼しいくて暖かい風が吹いてくる。
ゆっくりと空が明るくなって、未来の音が近付いてくる。
心が洗われるような気持ちになって、俺は前に綾薙学園で見た、あの台詞を呟いた。
「君から大切なものを受け取ると、君から大切にされていると思えるんだ…それだけで、世界から大切にされているように思えるよ」
「＿＿ほんの小さなガラクタ１つで、僕はこんなにも強くなれる……」
その声は閉めたはずのガラス戸の向こうから飛んで来た。
「一夜」
「お前早起きだなー！」
「すみません、起こしてしまいましたか」
「いーや！いいモーニングコールだったじゃん？」
「あはははっ」
朝日が一際輝く瞬間は、一夜の照り輝く笑顔に儚さを映した気がした。
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作者名：和澄紫郎 | 作成日時：2020年1月24日 13時
