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暖かな風がほのかに甘く儚い香りを運んでくる中、私は護衛1人引き連れずに、綺麗な花々が咲き誇る庭を黙々と突っ切っていた。この場所にある、とあるものを手に入れる為に。
背後には私の住んでいる宮が、太陽の光を浴びながらその尊厳を放っていた。
私が住んでいるこの場所は、弟のジョングクやお母様、お父様が住んでいる王宮ではなく、そこから少し離れた別宮である。
手入れの行き届いた庭、大きな噴水、そして全て高価な石で造られた宮。外観は申し分ない造りで、私が住む前は度々ここで豪勢なパーティーを開いていた、と聞いている。
｢住むものが違うと、見違えるものだな｣
ふと、そんな言葉が頭をよぎった。
遠い記憶ではない、つい最近聞いた言葉であろう。
まだ【12歳】の私の脳裏に焼き付いていた。
｢陛下は着々と王女を追いやる手筈を整えていらっしゃる。我々があの王女の顔を見なくなる日が直に来るであろう｣
｢しかし、陛下もかなり粘られましたな｣
このように時々、【今世】の私の記憶が蘇ることがあった。どうやらこの言葉は、私が別宮へ送り出された当日に国王の従者から投げつけられた言葉みたいだった。
その記憶を鮮明に覚えているということは、
【今世】の私はかなり根に持っていたらしい、と他人事に思う。
自分の背丈よりも高い花をかき分け、進んでいけば、手入れが行き届いた大きな池が鯉を侍らせそこにあった。
.
.
｢前王妃様は御自分の墓を指定なされていましたが、陛下はその要求を飲まず別の場所に前王妃様の墓をお造りになられました｣
脳内の映像がゆっくりと音を立てて始動した。
【前世】の【私】の記憶だ。
『そこはどこにあるのですか?』
【私】は黒い喪服に身を包んでいた。
｢王族しか踏み入ることが出来ない場所にございます。A様は、｣
笑みの絶えなかった元お母様の護衛騎士は、主君を失った故か感情という感情が全て抜け落ちたような、底無しの表情を浮かべていた。
『そう』
その時ふわりと風が吹いた。
花の香りを含んだ甘い香りを漂わせながら。
なびく髪を押さえながら記憶の【私】は諦めたように笑っていた。
『私は、お母様にお会いすることさえも許されないのですね』
私は一体なんなのだろう。
平民でもなく王族でもない。
ならば、私は一体何者なのだろう
この先私はどうなってしまうのだろう。
どこへ流れていってしまうのだろう。
流れ着いた場所に何があるのだろうか。
そこが死でも、私はこのままこの流れに身を任せられるのだろうか。
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葛湯(プロフ) - エレンさん» エレンさん、コメントありがとうございます！とっても嬉しいです!頑張ります！ (2021年9月15日 9時) (
レス) id: 05825be203 (このIDを非表示/違反報告)
エレン(プロフ) - とてもとてもおもしろいです！これからも更新頑張ってください！応援してます！ (2021年9月14日 21時) (レス) id: 3565c3ac01 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：葛湯 | 作成日時：2021年9月12日 22時
