UNLEASHED

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田辺side

女子の公式練習。

3日前ということもあり、まだピリピリとしている感じではない。

リンクは少し他の所より暖かくて暑い。

「A、そろそろ3回転アクセル」

林コーチに返事をし、助走に入った。

いつも通り踏み切り跳び上がったはずだったが、高さが足りず転倒。

──何かが違っていた。

「A、ちょっと強く踏み切った方がいいかもしれないな。
なんか滑ってる感じがある」

「はい！」

2回目の助走に入ろうとしたその時、視線の先で曲かけを行っていた紀平梨花ちゃんが3回転アクセルを決めた。

梨花ちゃんは同い年のライバルだ。
女子では3回転アクセルを跳ぶ選手は少なく、成功すれば、間違いなく大きなライバルだと思う。

2回目の踏み切りはよく、いける、と思ったが、回転がほどけてしまった。

1回転アクセル。

どうして...。

そう考えていると曲かけの順番がきたらしく、
名前がコールされた。

本番同様、コーチの元からリンク中央へ。

FPの曲は浅田真央ちゃんも使った「ピアノ協奏曲第2番」。

曲がかかるとゆっくり動き出す。

冒頭の3回転アクセル。

あ！、と思った時には回転がほどけてしまい、1回転アクセルになった。

その後はルッツ、トゥーループと順調に決めた。

そして後半。

3回転アクセルと3回転トゥーループのコンビネーション。

3回転アクセルで転倒し、Repeat。

散々な曲かけだった。

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田中side

さて、この状況はどうすればいいのだろう。

「あー！なんで跳べないの！」

Aは俺の部屋でベットに倒れ、3回転アクセルについて何度も語っている。

グダグダとダラダラと。

「刑事！」

「･･･何？」

ばっと起き上がり、俺を見つめるA。

「絶対オリンピック行くんだからね！
刑事も一緒に！」

･･･やめてくれ。
急に見つめてくるから心臓がヤバい。

「そうだね、俺も4回転決めるよ」

俺はそう言いながらAの隣に倒れる。

「･･･だからAも3回転アクセル決めろ」

しばらくの沈黙。

あえて強く言った。
この舞台に不安になる気持ちはわかるから。

隣を見ると天井を見つめるA。

･･･ヤバい、もってくれ心臓。

「決めるよ･･･絶対」

Aが呟いた瞬間、俺はAを抱きしめていた。

「･･･え？刑事」

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