UNLEASHED

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田辺side

タクシーから降りると生暖かい風が吹く。
9月後半、まだまだ暑さは続くようだ。

ネペラ杯フリーを棄権してから5日。
あのあとすぐに帰国して丸1日眠り続けた私は身体のダルさが嘘のように元気になった。

女子はメドベージェワが優勝。
男子は刑事が3位、銅メダル。

刑事に関しては、私がちゃんと空港に行ったのを確認したり、こまめに連絡してきたりしていたからではないか、と少し罪悪感を感じている。

本人は自分の力不足だって笑ってたけど。

「･･･出たかったなぁ」

待ち合わせ場所へと歩きながらぽつんと呟いた言葉は車のエンジン音にかき消された。

カナダで、オーサーの元で、ゆづと一緒に頑張ってきたからこそ、フリーも4回転を決めたかったのだ。

私が泣き続けている時、林コーチが棄権を申告しに行ったのを刑事の腕の中で聞いた。

どうしようもなく悔しかったし、体調を崩した自分を憎んだ。

･･･でも、あそこに刑事がいたから、コーチがいたから、みんなが言葉をくれたから次のグランプリシリーズを見ることが今出来ている。

「A！」

後ろから声が掛かる。









振り向くと少し泣き笑いのような顔が見えた









──変わったよ、わかなはちゃんと変わってる









刑事、私本当に変われてるのかな









あれだけしっかり決めたはずなのに









──そんな顔で見ないで、また迷ってしまうから──

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