UNLEASHED

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田辺side

ショートから中1日、今日は女子フリー当日。

またも最終滑走を引き当てた私。

「A、4回転を入念に確認しよう」

「･･･はい」

6分間練習の前。
林コーチからの声に1拍おいて返した。

リンク内が暑いからか、少しジョグしてきただけなのに、かいた汗の量が多い。

大事なフリー。
ショートと同じように4回転を決めて優勝する。
そして、伝えるって決めたから。

アナウンスがかかり、リンクへと入った。

この6分間でどこまでジャンプを安定させて、氷に慣れることができるかが勝負。

スピードをつけてリンクを滑りながら徐々にジャンプへ向かっていく。

まずはトリプルルッツ
･･･のはずがダブルルッツになってしまった。

なにかが違う。
身体が固まってるとかじゃなくて、動かせない。

「･･･はぁっ･･･」

会場はにぎやかなはずなのに、心臓の音がうるさく聞こえる。

なんとか滑り続けながら、必死にジャンプのイメージを繰り返した。

「･･･っ！！」

危うくメドベージェワ選手とぶつかりそうになり、身体を反らせてなんとか避ける。

今のは完全に私の不注意だ。
謝らなければと振り向こうとしても、身体が思うように動かない。

なんで･･･？

視界が急に歪み始め、徐々に身体の力が抜けていく。

メドベージェワ選手の声が遠く聞こえたのを最後に、私は意識を手放した。

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