検索窓
今日:2 hit、昨日:1 hit、合計:51,581 hit

32 ページ36

田辺side

「──A」

肩を荒く揺すられ、重い瞼を必死に持ち上げる。

「もう日本着いたよ?
刑事達待ってるだろうから行こ」

呆れたようにゆづが言う。

もう着いたんだ。

カナダからの便に乗ったところまでは覚えているが、そのあとの記憶が全くない。

連日の練習に疲れていたのか、深く寝入ってしまったようだ。

荷物をまとめ、立ち上がったゆづを見て慌てて立ち上がる。

しかし、一向に動きださないゆづ。

「・・・どうしたの?早く行かないと待たせちゃうよ」

「やっぱ降りたくない」

先程とは真逆の言葉と共に私の身体は席へと戻される。

両手首を掴まれ、目の前にはゆづの微笑した顔。

──ヤバい

もちろんカナダにいたときは急に抱き締めたり、キスしたりされていたが、さすがに帰国一週間前からは何もなかったのに。

完全に悪魔モードだ。

油断していた自分を心で叱りつける。

「このまま、カナダ戻ろうよA。
そしたらずっと一緒だしさ」

「ゆづ、ストップ!早く降りよ?」

段々と近づく顔にギュッと目をつぶったその瞬間。

「お客様、そろそろ機内点検の時間ですので」

CAさんの声にほんの一瞬ゆづの手が緩んだ。

「すみませんでした!!」

ゆづを突き飛ばすようにおし、荷物を掴んで逃げ出す。

機内から出ると、未だに音を立てる心臓を抑えた。

危なかった・・・

「あーあ、邪魔されちゃったね」

ヘラヘラと笑うゆづを少し睨みながらスーツケースをおし始める。

「A、ホントに考えときなよ?」

「何を?」

「カナダをホームリンクにすること」

横顔を見ると先程とは打って変わって真剣な表情。

きっと私への好意だけじゃなくて、ちゃんと技術のこととか考えて言ってくれているのだと思う。

「わかった、そんなすぐに答えられないと思うけど」

「・・・ま、まずは公式戦でVだね」

「だね!」

4回転トゥーループを武器に私は絶対勝つ。

大きく深呼吸してから刑事達の元へと足を進めた。

33→←31



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.6/10 (46 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
127人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

なべ(プロフ) - 架音さん» 返信遅くなりました、すみません。いつもありがとうございます!!昌磨くんオチですね参考に致します。そろそろ完結させようと思っておりますので最後までよろしくお願いします!! (2019年12月18日 18時) (レス) id: f19b1505d1 (このIDを非表示/違反報告)
架音 - こんばんは!楽しく読ませていただいております!ぜひ、昌磨くんオチお願いします! (2019年12月17日 21時) (レス) id: e40e7f28e3 (このIDを非表示/違反報告)
なべ(プロフ) - ありがとうございます!!田中刑事さん好きなんですね、参考に致します。これからもよろしくお願いします!! (2019年4月16日 21時) (レス) id: f19b1505d1 (このIDを非表示/違反報告)
???(プロフ) - 田中刑事さんがいいです!!! (2019年4月16日 20時) (レス) id: 145a60b08f (このIDを非表示/違反報告)
なべ(プロフ) - 櫻宮みゆさん、読み返すだなんてホントに光栄です!確かに田中刑事さんオチは少ないですよね。参考に致します。これからもよろしくお願いします! (2019年4月15日 19時) (レス) id: f19b1505d1 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:なべ | 作成日時:2019年3月25日 18時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。