UNLEASHED

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田辺side

全日本の会場に着いてから記者会見が開かれた。
知子ちゃんは連覇がかかるこの大会。
いつもの笑みは無く、1度も言葉を交わすことはなかった。

ホテルに荷物を運んでいる途中。

優勝したい。
でも、ベテランの知子ちゃんに果たして勝てるのか。

急に不安になったまま、エレベーターに乗り込んだ。

「A･･･？」

誰だこんな気持ちのときに名前を呼ぶのは。

振り返ってみると、

「しょーまくん！？」

あの昌磨くんが立っていた。

「なんか元気ないね？
まさか緊張してんの？」

「そのまさかですよ。
あー3回転アクセル跳べるんですかね」

少し自暴自棄になってみると、昌磨くんは私の手を握った。

「え･･･？」

「･･･跳べるよ。だってあのグランプリファイナルで決めたんだよ？そんなAが跳べないわけがない」

まるで私を元気づけるように、昌磨くんは少し強く手を握った。

「ですよね。そーですよ！
跳べないわけないかー」

「無理しないで。俺の前で」

「ありがとうございます。
やっぱ昌磨くんは優しいですね。
お互い、頑張りましょ！」

私は昌磨くんの手を握り返して言った。

「･･･ねぇ、A。
もしショートとフリー自己ベストだったら、もう敬語も君付けもやめて」

え？

冗談かと思ったら真剣な顔の昌磨くんが黙って私を見ていた。

「じゃあ、また今度」

いつの間にか開いていたエレベーターから降りて、昌磨くんは行ってしまった。

「･･･なに、今の」

ぼーっとしていると、いきなり頭に衝撃が、走った。

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