邂逅ー０１ ページ7
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「──それで、クビ寸前だったメガネくんはAちゃんと遊真のおかげでめでたくB級昇進！ いやーめでたいな」
昼夜を徹して行われた小型トリオン兵の一斉駆除活動でせっかくの非番日が仕事漬けになってしまった。それに 迅くんが愉快そうに話す 遊真 という人物のことがさっぱり分からない。迅くんはしょっちゅう説明が足りない。手元のマグカップに入ったココアはぬるい上に半分をきっている。
遊真くん？ の手柄が例の三雲くんに渡ることで彼の汚名返上を果たすことができたのはたしかにおめでたいと思う。ただ 遊真くんとは一体何者なんだろう。話を聞いた限りでは トリオン兵の第一発見者だということしか知らされていない。
「あのね 迅くん。私 遊真くんっていう子のこと全然知らないよ？ 迅くんのともだち？」
正隊員の名前と顔は大体頭の中に入っているけれど、いつまで頭の記憶庫を漁っても遊真という人物の顔は浮かばない。きっと私の知らない子だ。手前のテーブルの奥に座る迅くんはどこか面白そうに唇の片方を吊り上げた。
「どうだと思う？」
「考えても分かんないから聞いたのに……当てられたらなにかある？」
「ぼんち揚げを一袋贈呈しよう」
「それはいらないよ？」
あ 藍ちゃんが映ってる。
テレビでは 夕方まで続いた駆除活動の詳細についてのニュースが流れている。ソファでいつもより早めの就寝に入った陽太郎が起きてしまわないよう音量を落とした。
選択肢をあげないのは意外な答えだからだろうか。さらにぬるくなったココアを啜って、濡れた唇で浮かんだ予想を答えた。じゃあ、
「向こうから……来た、とか」
「おっ やるなAちゃん。賞品はまた後ほど」
「いらないからね？」
近界民に対して友好的な玉狛では驚くことじゃない。けれど どんな国から来たのだろうとか、どんな姿をしているんだろうとか、気になることがますます増えるばかり。容姿や性格を適当に想像していたところでとある可能性に思い至る。
「あれ？ ちょっと待って。もしかして その子がここに来るの？」
「そうなる未来は視えてるよ」
そう答えた迅くんの目は数日後の未来を浮かべて笑っている。なんだか楽しそう。ふうん、と零して あと少しのココアを飲み干した。
「こなちゃんは絶対反対すると思うよ」
「じゃあ Aちゃんは賛成なんだ？」
「あんまり弱いといやだけど……ちょっと楽しみ、なだけ」
「はは、ちょっとどころじゃないくらい楽しくなるよ」
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作者名：巡 | 作成日時：2021年1月24日 22時
