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「一週間後にはクリスマスみたいに楽しい日があるからね、お正月っていう」
「盛りだくさんだな、どんなやつ？」

　決して夜に紛れることのない真赤な瞳がきらりんと星を瞬かせる。素直で幼い好奇心が私には眩しい。
　一年が過ぎるのは本当に早かったと思う。気づけば春で気づけば冬の真っ只中だなんて、全ての一日が充実感で満ちていたはずなのに心做しかもったいない感じもある。それほどの感覚にじわりと寂しい気持ちが胸に滲んだ。

「毎年玉狛のみんなで神社に行って……そうだね、新年がいい年になるようにお願いするの。私は今回行けないけど……」
「んなんで？」
「防衛任務当たっちゃって」

　「みんなで楽しんできてね」、寂しい気持ちを振り切るように笑みを投げる。皆と一緒に行けないのは残念だけれど、年下の子たちがゆっくりと過ごせるのならそれで構わない。けれど今年は受験の合格祈願も兼ねて参拝したい。元日は一日中時間が空いてないけど──年末に行くのってありなんだっけ。どうなんだろう。空いてるかな……。

「……来年はどんな年になるかな？」

　大空を仰げば北斗七星の眩さ。ひしゃくから溢れる果てなきこの夜。午前の快晴のおかげで空のどこまでもが澄みきっていた。星のこどもたちも凛々しい光を地上に訴えている。
　白い吐息が上空に昇っていき、透けたところで遊真くんが赤い視線を迷いなく持ち上げた。

「なるみ先輩とこなみ先輩に全勝する年にするよ」

　確かな自信が滾った表情で遊真くんは白い月に誓ってみせた。射止めるような眼差しをそこへ送る赫い双眸には、もう誰もが夢に沈みかける時間だというのに熱い闘志が宿っている。
　晩ご飯のあとに夕方の約束通り何本かやった模擬戦はどれも私の勝ち越しに終わった。先輩として遊真くんには勝ち越されるわけにはいかない。だというのに明日、一週間後、いつかどこかの日に本当に全勝されそうな気がして背筋が強ばる。仄かな恐怖を悟られないよう平然を装って口端を吊り上げてみせた。
　
「それって本当に果たせる？悪いけど一生かかっても無理だと思うよ？」
「いやいや、そろそろな気がしますので」
「んーん。そう簡単にはさせないのが師匠というものです」

　絶対に負けられない。と意気込む割に大人気ない煽り文句を吹っかけてしまうのは結局私が焦っているから。弱気になっていたら小南ちゃんに怒られちゃう。これ以上距離が縮まることのないように、私もちゃんと強くならなきゃね。