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助奏ページ12

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「あっ……つ……」

　真冬といえ訓練室で全力で動き回ったあとに渡されあ飲み物がこんなに熱いお茶だなんて。ちゃんとスポーツドリンクも用意してくれているのはありがたいけれど、やっぱりとりまるくんって私のこと……。

　後からやって来た修くんがとりまるくんと訓練室に入って、そして脱水症状を起こしてベンチに倒れ込んでからしばらく経っていた。小南ちゃんと遊真くんはあと何度10本勝負を繰り返せば疲れを覚えるのだろう。底なしの体力が恐ろしくも羨ましくもある。
　ふとあ、と思うことがあった私はとりまるくんのほうを向いた。

「とりまるくん今日はバイト無いの？日曜日だよね？」
「今日は休みです。アイツが生き返ったら帰ります」

　親指で後ろの修くんを指した彼が隣に座るので右に寄ってスペースを増やす。二人分の体重を受けとったソファの座面は思ったより沈んだ。

「まだぐったりしてる……修くんはどう？」
「どうっていうか普通に弱いすね、等級詐欺かと思いました」
「え、そんなにひどいの……？」

　飲み終えたらしいスクイズボトルを正面のテーブルに置いてとりまるくんは淡白に吐き捨てる。ベンチに伏せるその溶け具合に「もう少し加減してあげればいいのに」と思うものの、問題点はそれ以上にあるらしい。
　蒸れて暑いのかとりまるくんは後頭部の髪をもさもさと掻きまわしている。暖房を消したほうがいいだろうか。

「そういえば迅さんがあの三人の師匠に成海先輩を指名しなかった理由知ってます？」
「え知らない！教えて！私すごく怒ってるよ」
「来週林藤支部長が最後の新人の一人を連れてくるらしくて」
「え？」

　エアコンのリモコンを探していた両目が開く。あまりに軽い調子で話したとりまるくんの顔に変化はない。すごく大切なことなんじゃないの。なんでもっとはやく教えてくれなかったんだろう、またわざと？

「誰？なんていう名前？」
「すいませんウソです」
「…………とりまるくん」
「やなんかいけそうだったんで」
「もー！騙すのはこなちゃんだけにして！」

　悔しい。絶対許してなんかやらない。なんでもないような顔で私の怒りを受け流すとりまるくんの肩を怒りに任せてがたがたと揺さぶる。やっぱり舐められてる。先輩なのに、私のほうが先輩なのに！

「次嘘ついたらとりまるくんのバイト先押しかけるからね！？いいの！？」
「えマジすか楽しみにしてます」
「そこは困るって言ってよ！？」