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黛灰「はい、お大事にね。次の方ー。」

シェリン・バーガンディ「はい!症状は」

黛灰「音割れね、了解。」

シェリン・バーガンディ「まだ何も言ってませんけど!?」

薬データの受け渡しを託され、そろそろ何年経つだろうか。常連のシェリン・バーガンディ(還元される気すらない)は、今日も同じ薬を渡され、その場で飲んでいる。

無症の患者だろうと、語部と同じように薬を飲まなければ存在することすら不可能となる。先代の力があまりにも強すぎた証拠だ。

「皆さんが薬を飲み忘れようと、私の力で皆様を顕現させることは可能です。ぶっちゃけ吐きそうなぐらい辛いので、できれば還元されてください。」

地味に本音も聞こえたような気がするけど......とにかく、昔は先代さえ生きていればなんとでもなる世界だったという。

でも先代は死んだ。死んだからもう楽なんてしない。むしろ楽してた方がおかしかった。

みんな一人の人間に負を背負わせ、自分は自分の苦しみだけを背負っていた。本当ならすべてを背負うのが患者の役目なのに、俺たちはそれを放棄していた。

シェリン・バーガンディ「僕、先代の記憶がちょっと曖昧になってるんです。」

黛灰「魂の劣化を背負って、ここに来たからね。またここに落とされたときには、君も記憶を引き継いでいるよ。」

シェリン・バーガンディ「......そうかなぁ。」

自分というデータにバグが現れるようになり、苦しみ始めたときに気づいた。今代には先代のような力はないということを。

今代はそれを理解し、苦しんでもなお、俺たちを助けようと必死になっていたことを。

.→←ドジなシェリン・バーガンディ



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作者名:琲世 | 作成日時:2022年4月14日 8時

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