奈落の海 ページ18
深く深く、沈んでいく。
遠く遠く、太陽は消えていく。
............私は、私が死んだ理由を覚えている。彼らは単なる事故として処理してくれたけれど、実際は違う。どうやら私は、兄弟に八つ当たりで殺されたらしい。
ライバーとなる前だったが、それでもAという器は持っていた。それを冠した人物として、私は生きたことになった。
つまりは中途半端な、ツギハギな存在。それでも冥界に落とされただけマシな方だろう。
「(......霧の世界?こんな世界もあるのか。そういえばあの主、基本的に私たちはこの世界で起きたことを記憶していると言っていたが。私は何故記憶していない?)」
記憶も中途半端なまま、私はその足を動かしてみる。霧の世界から出ることが叶うのなら、私が求める何かも見つかるだろうという期待も込めて。
葛葉「こんなところに出口はない。」
「?」
葛葉「出る方法なら一つだけあるぜ。極悪人のデータを自分として、裁かれるために出る。その時にはアンタの意識は削除されているけど、どうする?」
どうせこんなツギハギな自分では、欲しいものさえ分からないのだろう。なら他人に体を明け渡した方が好都合だと考えた。
例えそれで人様に迷惑をかけるとしても、別にいいだろう。
「それでお願いします。あなたに私の体、差し出しましょう。」
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作者名:琲世 | 作成日時:2022年4月14日 8時