one more chance【御幸一也】 (ページ8)

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今日は試合でも何でもないただの練習だけど、OBやら何やらで観客がたくさん来ていた。

七瀬、来てんのかな···

監督「20分休憩してから続き始めるぞ！」

「「「はい！」」」

練習中は周りを気にしている暇もなく、ケースバッティングを終えてベンチに戻ってきたところで、紙袋を抱えた沢村が俺を出迎えていた。

沢村「キャップ、あの···」

御幸「ん？なにそれ」

沢村「昨日学校で会った先輩が、御幸先輩にって···」

昨日会った先輩って···

御幸「七瀬が！？いつ！？」

沢村「ホントについさっきッス！」

気がついたら俺はベンチの外へ走り出していた。

校門の方へ走っていくと、見慣れた後ろ姿があった。

御幸「七瀬！」

俺が呼び掛けると、七瀬は立ち止まって振り向いた。

A「あれ、御幸君？」

御幸「いや、沢村から聞いてさ···ありがと。まだ中身見てないんだけど···ははっ」

とっさに追いかけたが、なんて話せばいいのかわからなくて、言葉が途切れ途切れになってしまった。

そんな俺を見てフフッと微笑む七瀬。やっぱり綺麗だ。

A「ただのレモンのハチミツ漬けだよ。たくさんあるからみんなで食べて」

御幸「ああ」

A「本当は練習が終わるまで見てようと思ってたんだけど、お父さんが迎えに来たから」

御幸「そっか。今度はゆっくりしてけよ」

A「うん。今週末練習試合なんでしょ？応援いくから」

御幸「あぁ。待ってる」

A「うん。じゃあまた今度ね」

微笑んで、七瀬は歩いていった。

御幸「あ、連絡先聞けばよかった」

くそー、七瀬の前だといつも余裕なくなっちまう。

本当は話したいことがたくさんあるのに。

七瀬がいなくなる前に、ちゃんと気持ち伝えられんのかな、俺···

いや、伝えるんだ！

沢村「あ、キャップ！どこ行ってたんスか！」

御幸「ちょっとな」

沢村を軽くスルーして、七瀬からもらった差し入れを紙袋から取り出した。

倉持「あ、なんか落ちたぞ」

取り出した拍子に何か紙が落ちたみたいで、倉持が拾ってくれた。

御幸「あ、サンキュ」

そこに書かれていたのは...

『御幸君
キャプテンで、キャッチャーで、いろいろ大変だと思うけど無理しすぎないようにね。私でよかったら話聞くからね。応援してるよ。』

心が暖まるメッセージと、その下には七瀬のメールアドレスが書いてあった。

俺は心の中でガッツポーズした。