one more chance【御幸一也】 (ページ6)

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A「御幸くん、話って？」

御幸「あー、えっと・・その・・」

やべぇ。何も考えてなかった。

とりあえず、何か言わないと・・・

御幸「カバン重たそーだな。俺が持つよ」

A「あっ大丈夫だよ！」

御幸「そんなこと言って、歩いてる時よろけてたじゃねーか」

俺は七瀬からカバンを取り上げた。

カバンはズッシリと重たくて、俺の予想は当たっていると確信した。

御幸「これ教科書だよな？持ち帰る必要ないのに、学校辞めんのか？」

俺は冗談混じりっぽく言ってみた。

本当は転校するってこと知ってんだけどな。

A「ははっ、御幸くんは鋭いね。やっぱり隠せないや・・・」

七瀬は呆れたように笑っていた。

A「私ね、転校することになったの・・・」

御幸「え・・・」

まさかこんな序盤で教えてくれるとは思わなかった。

とりあえず知っていることがバレないように俺はリアクションをした。

A「みんなに言うと悲しむかなと思って言わなかったんだけど、バレちゃったね」

御幸「いや、俺はむしろ言ってくれた方が嬉しいよ。そりゃ悲しいけど、卒業したらまた会えるだろ？」

A「御幸くん、卒業しても私に会ってくれるの？」

御幸「あ、まあ、そうだな。だって2年も同じクラスだし、俺が言うのもなんだけど俺たち結構仲良いだろ？」

A「ぷっ、ありがと。私も御幸くんと仲良いと思ってた」

七瀬はまた笑った。

でもさっきと違って心から笑ってるから、俺はすごく嬉しかった。

A「御幸くん、あのさ・・・」

御幸「ん？」

A「夏休みの間、野球部の練習見に行ってもいいかな？」

御幸「え、いいけど・・・」

A「ありがと。あ！お父さん迎えに来たみたい」

俺は車までついていき重たいカバンを積んで七瀬を
見送った。

御幸「じゃあ、またな」

A「うん、またね」

この前は言ってくれなかった「またね」という言葉。

すごく嬉しくて涙が出そうなのを必死に堪えた。

七瀬にまた会える

そう思えるだけで、俺はこれから待ち受けているであろう野球部の課題もなんとかなる気がしてきた。