one more chance【御幸一也】 (ページ19)

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19(亮介side) ページ19

保健室に入ると先生はおらず、俺は勝手に絆創膏を探してポーチに詰め込んだ。

亮介「ラッキー。絆創膏代浮いた♪」

「先生···?」

か細い声が窓際のベッドから聞こえた。

その声は聞き覚えがあった。

俺はベッドの方へ向かい、カーテンの前に立った。

亮介「七瀬先輩？」

七瀬「あれ？その声は···小湊くん？」

七瀬先輩と確信した俺はカーテンを開けた。

亮介「せ、先輩····」

そこにいた七瀬先輩は、前会った時よりもさらに痩せていて、弱々しかった。

七瀬「久しぶりだね。こんな姿で恥ずかしいけど」

前は制服だったのに、今日は私服だった。

七瀬「もう体調も良くなくて学校には通えないから今日が最後だったの。最後くらい教室に行きたかったんだけど、無理みたい」

七瀬先輩の笑顔はひきつっていて、辛そうだった。

窓の外の校庭には、体育の授業の前なのかジャージ姿でサッカーをしている生徒の姿があった。

そして目の前には、今にも消えてしまいそうなくらい弱々しい七瀬先輩。

先輩はずっとここで、外を眺めていたんだ。

同じ高校生なのに、こんなにも違うのか···。

七瀬「はあ。元気なうちに青春したかったな」

亮介「したかったって··これから治して戻ってくればいいじゃないですか」

七瀬「···そうできたらいいんだけどね。多分、もう私長くないよ」

七瀬先輩は下を向いた。

亮介「なんでそんなこと···」

七瀬先輩は、全てを悟っているような、諦めているかのような表情だった。

七瀬「春休みの時は歩けたんだけど、もう足も動かないの···。夜寝るときは、このまま目が覚めなかったらどうしようって不安になるの」

俺は何も言えなかった。

俺みたいな健常者が何を言っても、先輩を慰められないと思ったから。

七瀬「小湊くん、あのさ···」

亮介「はい？」

七瀬「もし、過去に戻れるなら、私に青春ってどんなものか教えてくれる？」

亮介「え？」

唐突な質問に、俺の頭は理解ができなかった。

ていうか今こんな現実味のない話する？

七瀬「後輩の小湊くんに頼むのも変な話なんだけどね、この学校で一番長く話したのは小湊くんなんだ」

亮介「頼むって··そんな夢みたいな話···」

自分の死と向き合っているように見える七瀬先輩が、なぜそんなことを言うのか不思議で、俺は思考が追い付かなかった。