one more chance【御幸一也】 (ページ18)

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18(亮介side) ページ18

1年の春休み前。

ついに初めて授業をサボった。

「お腹痛い」というベタな理由で先生が許してくれたのも奇跡だ。

ただ昨日先輩たちにゲームに付き合わされたせいで寝不足なだけだったんだけど。言ってみるものだね。
　

保健室に入り、一番暖かそうな窓際のベッドへ向かった。

誰もいないだろ、と思いカーテンを開けるとそこには先客がいた。

「ダメだよ。ここは私の特等席···席というかベッドだけど···んー、だから特等ベッド？なんだから！」

白い肌、ちょっと強めに掴んだら折れてしまいそうな細い腕。

でも、その人はすごく綺麗な顔立ちをしていた。

亮介「す、みませんでした。失礼します」

「あっ、ちょっと待って！」

別のベッドに移動しようとした俺をその人は止めた。

よく見るとリボンの色も2年生だし、正直関わるのが面倒臭かった。

亮介「何ですか？」

「いや、なかなか保健室に人来なくてさ、ちょっと話し相手になってくれないかなーと思って···」

亮介「ちょっとなら、いいですけど」

不安そうな表情が一気に明るくなって、俺はその人に見とれてしまった。

胸元の赤いネックレスが、太陽の光で輝いていた。

その人の名前は七瀬先輩。

体が弱くほとんど教室には行けていないが、あの東先輩と同じクラスらしい。

七瀬「教室で転んだときに立てなくて、東君が軽く持ち上げてくれたんだー。意外にやさしいよね！」

亮介「俺たちには厳しいですけどね···」

授業が終わるまでの間他愛もない話をしていたが、七瀬先輩は迎えが来たらしく、車椅子にのせられて帰っていった。

春休みに入った頃には、七瀬先輩の存在は頭の片隅にもなく野球に集中する日々が続いていた。

そして2年になって一ヶ月もたたない頃。

純「いでっ！紙で指切っちまった」

亮介「日頃のバチが当たったね。はい、ばんそうこ···あ、ない」

いつもストックしている絆創膏を切らしてしまった。

純「ねーのかよ！···保健室いってくるか」

『保健室』

そのワードが出たときに、ふと七瀬先輩のことを思い出した。

亮介「しょうがない、今回は俺がとってきてあげる」

純「まじか！？珍しいな！どーいう風の吹きまわしだ？」

亮介「ストックもないし、保健室からパクってくるよ」

もしかしたら七瀬先輩がいるかも···

そんなことを考えながら俺は一人で保健室に向かった。