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ベンチに座ってジュースを飲みながら、七瀬の迎えが来るのを待った。
俺たちは夏休み前のように他愛のない話をしていた。
御幸「そういえば、転校先って決まったのか?」
A「うん。長野の超田舎」
御幸「そうかー。親の都合って言ってたけど、転勤?」
A「あれ、なんで知ってるの?そんなこと言ったっけ?」
やべ、親の都合って話したのはタイムリープする前の話だった···
何とかごまかさないと···
御幸「い、いや!なんか、そんな気がしただけ!!」
A「まあ、転勤っていうか、何て言うか···」
七瀬の表情が少し暗くなり、下を向いた。
なんか、聞いちゃいけないことだったのか···?
A「わたし、お姉ちゃんがいたんだ」
御幸「···え?」
A「2こ上のお姉ちゃんで、青道にいたんだけど体が弱くてね、ほとんど保健室にいたの」
七瀬は足をパタパタと揺らしながら、淡々と話した。
A「そのお姉ちゃんが去年死んじゃってね、お母さんが塞ぎ込んじゃって、人の少ない自然の多いところに行こうって話になったの」
御幸「そ、そうだったのか。七瀬にお姉さんがいるなんて知らなかった···」
A「まあ、話してないしね。入学してすぐのことだったし」
七瀬の話を聞いて、ふと亮さんとの会話を思い出した。
『···あの人は、もうこの世にいないから··』
『あの子も七瀬って言うんだ』
もしかして、亮さんが言ってたあの人って、七瀬のお姉さん···?
A「友達もいないみたいだったし···あ、一人だけお葬式に来てたってお父さんが言ってたような···なんかピンク色の頭してたって。私ずっと泣いてたから気づかなかったけど」
ピンク色の頭···やっぱり亮さんだ。
御幸「そっか···辛かったよな」
俺と七瀬は入学してすぐ、隣の席で仲良くなった。
でも、七瀬が一番辛いときに気づいてやれなかった。
俺のバカ···
A「今はもう大丈夫だよ。本当は私だけここに残ろうかと思ったけど、お母さんを支えなきゃいけないし、現実的に考えてついていかなきゃって···。みんなと別れる方が今は辛いかな」
御幸「七瀬···」
七瀬の目が涙で潤んでいた。
そうだ。薬師との練習試合が終わったということは、夏休みも終わる。
七瀬と話せるのも、もう少ししかないんだ。
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アンズ(プロフ) - うわぁぁあ……切ねぇ…… (2022年2月3日 23時) (レス) @page20 id: af5bfd0de9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Sone | 作成日時:2021年7月6日 22時