【FHQ】世界が終わるその前に【及川徹】《完結》

12変わらないところ ページ13

「もう、いい加減にしてください。
あなたはこの世界の大王ですよ？

大王がそんなんでいいんですか？」



大王にお説教しながら、城への道を
早足で歩く。



「怒らないでよ〜


てか、A、君さっき俺の事バカって言ったね？」


「言いましたが？
間違ったことは何も言ってませんよ」


「酷いなぁ。俺王様だよ？
そんな口聞いていいと思ってるの？

首切りの刑にしちゃうぞ？」



大王の一言でこの世の者の
生死は決まる。


側近である私も、もちろん例外ではない。


でもここで権力投入なんて呆れる。



「……忘れたんですか？

今から5年前、あなたがさっさと言語を統一
しなかったから大混乱が起こった。




他の言語が読めない、話せないあなたに

書類の翻訳やその土地の代表の通訳を
してあげたのは誰でしたっけ？」



もちろん、それは私だ。


私のおかげで混乱は収まり、言語も統一され
今は平和な世界に戻った。



「うぐ…Aサンです」


「ハイそうです。そんな私の首切っちゃいますか？」


「いいえ…」





私の方がボキャブラリーは断然多いし
頭の回転も速い。


言い合いだったら私が負けることは
まず無い。





「ハァ〜15年前はあんなに可愛かったのに…」


愚痴を零す大王。


「悪かったですね。見た目も中身も
可愛く成長しなくて」


「いーや、見た目は見事に成長したよ。

性格は……否定しない」



さらっとこういうことを言うところが
チャラい。




「私だって、15年前は大王カッコイイステキ
とか思ってましたよ。

……、なんでそんな風に思ったか
あの頃の自分が不思議でしょうがないです」




平和な世になったから、大王もこうなった
のかもしれないが、


堂々として強くてかっこ良い。

憧れていたあの頃の大王とはまるで別人。



「酷い！」



「ハイハイ。

じゃあさっさと城に戻りましょう」


「わかりましたぁ〜」


大王は緩い返事をして、私を抱きかかえた。


「えっ、ちょっと」


「飛んだ方が速いし、飛べないAちゃんは
この景色普段見れないじゃん？」


パチン、とウィンク。



チャラい…でも、この上空からの風を感じ、
鮮やかな世界の景色を見渡せるのは好きだ。


「この景色は…好きです」


「昔から目ぇ輝かしてたもんね」




大王のこういう優しいところは
昔から変わらなくて、好きだったりする。

13寂しい季節など→←11黄色い声

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す