【FHQ】世界が終わるその前に【及川徹】《完結》

10懐かしい夢 ページ11

「様……、A様！」



その声にハッと目が覚める。



「あれ、寝てた…？」


「ハイ、珍しいですね、お昼寝なんて。
お疲れですか？」


「んー、かも。

でもいい夢見た。懐かしいの」




今から15年前。

私がこの城に来た時のことを。



こんなにハッキリとした夢を見るなんてすごいな。




「それより、どうしたの？
何かあった？」




少し焦った様子の家来。



「あぁ…これから大事な会議があるんですが
大王様が見当たらないんです」


「え、またあのバカ大王いないの」


「ハイ…」





私の恩人、オイカワ大王。

その人をバカ呼ばわりするのは如何なものか。



事情を知る人ならそう思うかもしれない。





でも、あの人は“バカ”と言われても仕方ない
くらい、勝手気ままの自由人なのだ。





「ハァ…、わかった。大体見当はつくから
私が連れ戻してくる」


「ありがとうございます」





執務室から出て、長い長い廊下を歩き、
階段を降りて外に出る。






…、本当なら、窓から出て空を飛んで
探しに行きたいんだけど。





15年前、この城での生活に慣れてきた頃、
クロさんに魔法を教えてもらった。



空を飛びたい飛びたい、と思い
頑張った…が、しかし。


私は飛ぶことが出来なかった。




せいぜい軽いものを浮かせることが
出来るくらい。




魔法には才能とセンスが必要だ、と
クロさんは言う。



私にはその才能は全くなかったみたい。






魔法使いという夢は断念。


大泣きしたっけなぁ。




「よ、A。またワガママ大王探しか？」


「クロさん。そうですよ、まったくあの大王は」



途中でクロさんに会った。

15年経った今でも、見た目はあの頃と変わらない若い姿。


「相変わらず見た目変わりませんね」

「魔族は不老だからねぇ〜」


そう、クロさんは魔族。
オイカワ大王とキヨコさんもだ。


魔族というのは、ある程度まで成長したら
それ以降は老けないらしい。


だから、3人とも見た目は変わらない。



不死ではないからいずれは死ぬらしいけど、
それでも人間よりはずっと長く生きる。



「うらやましいですよ」


私は魔族ではない。

普通に老けるし、寿命も短い。


女子としては、不老にはとても憧れる。



「アハハ、でもAは老けてもきっと美人だから」


「口がうまいんだから。


…あ、大王探さないと、失礼します」

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