step28 ページ28
Your side
またね、かぁ……。
私、安井くんのふとした時の言葉選び好きだな。
「さよなら」とか「バイバイ」じゃなくて「またね」。
次に会う約束がない、いつ会えるかわからない関係だからこそ「またね」って言ってくれるのが、素敵だなって思った。
そんな事考えてたら、１人の帰りの電車でニヤけてしまって。
……危ない危ない、抑えなきゃ。
電車を降りて、改札を出て、歩き始めたところでスマホに通知が入った。
表示された名前は、「安井くん」。
不思議に思いながらトークルームを開くと、
安井くん:Aちゃん、学生証忘れていったよ
安井くん:ながつに預けたから受け取って
なんて言われた。
……あれ、本当だ。
定期入れの中から私の学生証は姿を消していて。
お礼を打ち込もうとして、ふと手が止まった。
画面に表示されたのが安井くんらしくない、ちょっとトゲがあるような言葉なような気がして。
「ありがとうございます。」
そう送信してみるとすぐについた既読と、一向に来ない返信。
何かしら異変を感じた。
確かに返信しづらい内容だけど、今までの安井くんは「いえいえー」とか「また遊ぼうね」とか何かしら返してくれてたのに。
あぁ、そうか。
これは、拒絶だ。
そう考えると、ストンと腑に落ちて。
足の力が抜けて思わずその場でしゃがみ込んだ。
「やっすーとAちゃんって、似てるんだよ。」
今日の森田さんの言葉が脳内でグルグルと回る。
本当に私と安井くんが似ているとするならば。
今の安井くんの態度は間違いなく拒絶だ。
似ていると言われた意味がようやくわかった気がする。
確かに安井くんは、私の機微に聡い。
確かに私は、安井くんの変化によく気づけるのかもしれない。
でも、そのことが今回だけは憎かった。
そんなことに気づかないまま、呑気に仲良くやっていると勘違いし続けたかった。
もう、気軽に連絡なんて取れなくなっちゃったなぁ。
ボロボロ泣きながらも、心の片隅にいた冷静な私が他人事のようにそう呟いていた。
とにかく誰かの声が聞きたくて、美咲の連絡先を探して迷わず通話ボタンを押した。
美咲「A？どしたの？」
『美咲、急にごめん。』
ボロボロ泣きながら声を出すと、美咲は慌てたように
美咲「えっ、A！？何で泣いてんの！？」
なんて言っていて。
……何で泣いてるんだろう。
自分でも、わかんないや。
『ごめん、気にしないで。
……あのさ、変なこと聞いてもいい？』
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作者名：綺羅 | 作成日時：2017年6月1日 23時
