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step03 ページ3

Kentaro side


「それじゃあ、安井くんお疲れー。」
安井「お疲れ様です。またよろしくお願いします。」


スタジオから外に出ると、空は赤く染まっていた。
もう6時過ぎなんだ。早いなぁ。


森田「やっすー、お疲れー。」
安井「お疲れー。
あれ、みゅーとも帰るんじゃないの?」

俺に声を掛けた美勇人は、何故か駅とは反対方向へ向かっていた。
俺がそう言うと、あぁ、なんて笑って。

森田「今日はこっちで友達とご飯行くから。」
安井「あー、そうなんだ。じゃあ俺は帰るわ。」

気をつけてー、なんて笑って逆方向に歩いて行った美勇人。

そういえば俺、今日のご飯のこと考えてなかったな。
…何かもうめんどくさいし、今日はコンビニでいいか。


そう思って駅前のコンビニに入った。何がいいかな。
……あ、パスタいいな。

目に入ったパスタに手を伸ばすと、後ろからあれ、なんて女の子の声が聞こえてきた。
……もしかしてファンの子か。バレたかな。


?「あのー……?」
安井「あ、はい。………って、あれ?」


ファンの子だろうと思いながら後ろを振り返ると、そこには予想に反して見覚えのある女の子がいて。
彼女は俺の顔を見てニコッと笑った。


『この前、お財布拾ってくれた方ですよね?』


ちょうど一週間前と同じ制服を着た黒髪の女の子。
忘れるはずもない。

安井「あ、あの革財布の。」
『そうです。その説は本当にありがとうございました。』

そう言ってペコっと頭を下げる。
一見礼儀正しいようなんだけど……うーん、読めない。



『あの、アイスお好きですか?』

何を言ったらいいか困っていた俺に、彼女はいきなりこんなことを言った。
……いきなりなんで?


安井「えっ、うん、好きだけど……?」
『じゃあ、一緒に食べませんか?』

好きなの、奢りますよ。
そう続けた彼女に、戸惑いを隠せない。

だんだん暑くなってきたこの時期にアイスは、確かに嬉しいんだけど。
なんでいきなり、しかも俺の方が年上なのに奢るとか言われてるんだろう。


『遠慮しなくていいですよ。この前のお礼のつもりなので。』


遠慮しようと口を開きかけた俺に被せて、こんな風に言われた。
あれ、もしかして今断るタイミングを失った?


安井「……じゃあ、お言葉に甘えて。」


確か財布を拾った日に、お礼を断ったのは俺で。
だからこの前のお礼と言われて、断れる訳もなかった。



この子にちょっと興味が湧いたって理由も……まあ、無いわけじゃなかったんだけどね。

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作者名:綺羅 | 作成日時:2017年6月1日 23時

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