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Your side
診断結果は中程度の捻挫だった。
病院の先生にも無理して歩いたことを怒られ、無理をしないことと安静を命じられてしまった。
きっちりと固定された右足首に力をかけないようにゆっくりと歩く。
ずっと隣で私を支えてくれている安井くんの顔をちらっと窺うと、怒っているような、心配しているような、微妙な顔で私を見ていた。
森田「あ、終わった?タクシー呼んだからもうすぐ来ると思うよ。」
『何から何まですみません……。』
森田「いいの。
怪我人なんだから、気遣わないでよ。」
柔らかく笑う森田さんに手渡された私のスマホ。
……そうだ。代わりに連絡取ってもらったんだっけ。
『あの、怒ってませんでした?』
森田「え?何が?」
『母です。何か言ってましたか?』
森田「ああ。ううん、特に何も。」
良かった。
変なこと言ってたら、またお2人に心配かけるところだった。
丁度やって来たタクシーに3人で乗り込む。
私の家までの道を簡単に運転手さんに説明して、走り出したところで森田さんが口を開いた。
森田「Aちゃん、足、大丈夫だった?」
『はい。捻挫だったみたいで。』
森田「そっかぁ。安静にしてなきゃダメだよ?」
『それ、病院の先生にも言われちゃいました笑』
そんなにみんな私が走り回ると思ってるのかな?
一応私だって考えて行動してるんだけど……。
安井「何で不服そうな顔してるの笑」
『だってみんな私に安静にしろって言うので。
私そんなに走り回ったりしないですよ。』
安井「どの口が言うか笑
今日、走り回ってたんでしょ?俺達と会うまで。」
『いや、それは仕方がなかったというか……。』
笑いながらもちょっと真剣に窘めるような口調の安井くん。
きっと安井くんは、本心ではちょっと私に怒ってる。無茶して怪我した私を心配してくれている。
森田「え、リレーの時に足ひねっちゃったんじゃなかったの?」
安井「いや、それもあるらしいんだけど。
今日、俺達と会うまで『鬼ごっこ』してたらしいよ。」
森田「そうなの!?」
驚いた顔で私を見る森田さんに、ゆっくりと頷く。
まあ、うん。間違ってはいないし。
実際は鬼ごっこ、なんて可愛いものじゃなくて、繁華街でチンピラっぽい人から必死に逃げてたってことは、心配性なお2人には秘密にしておこう。
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作者名:綺羅 | 作成日時:2017年6月1日 23時