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手荷物1つ持たなかった俺たち2人は、パソコン1つを抱えて家へと帰ってきた。
「ただいま…ってうわ、暗っ!?」
家へと足を踏み入れた俺たちは、部屋に明かりがついていないことに気づく。
「まったく…まさか全員外出中か?」
「わかんない…コウ、ちょっと電気つけられる?私夜目が効かなくて」
「あぁ、わかった」
彼女の頼みに頷き、俺は真っ暗な部屋を進む。
少し進んだドアの近くに証明ボタンを見つけて、俺は迷うことなくパチリとつけた。
その瞬間だった。
「!!!」
四方八方からパーン!と破裂音と共に、紙吹雪のような、帯のようなキラキラした何かが俺に降りかかる。
わけもわからずぽかんとしていると、明かりのついた部屋で、A含めた4人が何かを持ってニコニコしているのが見えた。
クラッカー…だろう。
どうやらコイツらは、俺を驚かすつもりで暗い部屋の中潜伏していたというわけだ。
「お前たち、一体何を…」
「コウさん!お誕生日…せーのっ」
「「おめでとう!!」」
ユキナリの掛け声に合わせて、4人が祝いの言葉を叫ぶ。
誕生日。俺、の。
「A姉さん、プレゼント買ってきた?」
「もちろん。リンタロウこそケーキの準備は?」
「当たり前だよ!」
「すうどんできたで!」
「ミサキさん、オレも手伝うよ…!」
皆が慌ただしく食卓に品々を並べる中、俺は呆然と壁にかけられたカレンダーを見た。
今日は、7月8日。
俺の、誕生日。
…すっかり、忘れていた。
おばあちゃんが死んで、それ以来俺の誕生日を祝うやつなどいなかったのだ。
それが当たり前だし、正直どうでもよかった。
「ほら、コウさん座って!」
「これも被ってもらわなきゃね〜♪」
席について、『本日の主役』などと書かれた帯を身体にかけられ。
未だ呆ける俺に、Aが差し出してきたのは、俺たちが買ってきたあのパソコンだった。
「騙すようなことしてごめんね。こうでもしないと、コウって遠慮しそうな気がしたから」
受け取って、と言われるままに俺はプレゼントを受け取った。
皆ですうどんをすすって、話に花咲かせ。
言われるがまま、ケーキに刺されたロウソクの火を吹き消し、Aがそのケーキを5等分に切り分ける。
「お誕生日おめでとう、コウ」
「…!!」
ニコリと微笑むAに、俺はハッと息を飲んだ。
その表情はまるで、おばあちゃんのように優しく、愛しさを孕んでいた。
You remind me of a special emotion.→←【新村コウ誕生祝い特別編】
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麗紅花(プロフ) - 此処まで読んできましたが……不幸な終わり方ではなく、正しい道を貫く事を選んでからの幸福になるエンドで良かったです!(←語彙力がオカシイ……)。しかも、番外編的な続編もあって良いと思いました。「是非とも続きを!」と思いました。機会があれば、お願いします (2022年12月13日 16時) (レス) @page23 id: ba1809d3dd (このIDを非表示/違反報告)
黒我 - 今更なんですが……とても面白かったです!!もし続きがあるのであれば楽しみにしております!! (2021年11月12日 21時) (レス) @page23 id: 4b03b5f44e (このIDを非表示/違反報告)
アヤノ(プロフ) - 海月猫さん» ありがとうございます^ ^頑張ります! (2019年6月19日 0時) (レス) id: a5f5162e93 (このIDを非表示/違反報告)
海月猫(プロフ) - 面白かったです!これからも頑張ってください! (2019年6月18日 0時) (レス) id: db1e8d80c6 (このIDを非表示/違反報告)
桜音 - 下に書かれている方が居ますが、オリジナルフラグはちゃんと外しましょう。スタジオわさびさんに失礼ですよ。 (2019年1月17日 14時) (レス) id: 257d7b43bb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アヤノ x他2人 | 作成日時:2018年6月22日 12時