STORY 9 ページ9
路地裏まで来るとマーロンを引っ張っていたトムはようやく足を止める。
「ちょっとトム、吹っ飛ぶかと思ったよ」
マーロンは目を回している。無理もない。大の男が本気で走れば子供の足が追いつけることは難しい。 途中で必死にトムの腕にしがみついていたから派手に転倒して大怪我を負うことは防げたがマーロンはもうこりごりだった。
「す、すまん。面白いから見てたけどああいうのって目ぇつけられたら厄介だからさ。まあ、追ってこないから大丈夫だと思う」
むしろあの場で逃げたら余計に怪しまれるのではないかと思ったが何も言わなかった。
「あ、そうだ。ねえトム、今日……」
言いかけて口を噤む。マーロンの視線の先には足早に歩いているクラウディアの姿があった。
「……来て」
今度はマーロンがトムの手を引き、こっそりとクラウディアの後をつける。案の定彼女はどこか知らない場所へと向かっているようだ。
「おい、何か知らないが見つからないようにしとけよ？ お前の母親怒ったらおっかないからさ」
「うん」
町を出てから三十分は経過しただろうか。彼女は森の中を進んで行く。木の葉の間から太陽の光が射し込み、地面にまだら模様を描いている。時折、鳥や動物の声も聞こえてくる。
「お前の母親って狩りでもする……わけないよな。手ぶらだし」
森の奥深くへと差しかかった途端、全ての音が止んだ。日も暮れていないにも関わらず、仄暗い。あまりにも静かすぎて呼吸の音すら勘付かれそうだ、とマーロンは思った。さすがのトムもこの空間で声を出す気はなく、互いに無言のまま、先程よりも慎重に後を追う。
ふと彼女が足を止め、二人は慌てて運良く側に立っていた大木の陰に隠れてそっと様子を伺う。ひょっとしてバレたのか？
緊迫した空気の中、一匹のウサギがクラウディアの足元へ寄っていく。彼女はそれを見下ろし――捕らえた。
「……は？」
トムは思わず声をもらす。反対にマーロンは声も出せぬほど、驚愕していた。
黒く長い二本の枝がウサギを締め付けている。それは本来クラウディアの右腕がある場所に生えていた。彼女の右手が一瞬にして枝へと変わったのだ。
今しがた捕らえたばかりの獲物は宙に持ち上げられた状態でも逃げようと足をばたつかせる。三本目の枝が彼女の腕の付け根から伸びたかと思うと鞭のように風を切る。
「まずい、見るな！」
トムがマーロンの目を覆った直後、ウサギの首は胴体から切り離された。
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田無苑珠(プロフ) - 寝夢さん» ただでさえ無実の女性を平気で殺しまくってる人ですからね。どこかもう自分でもどうしようもできないほど壊れてるんです。 (2017年6月5日 20時) (
レス) id: f9f63da005 (このIDを非表示/違反報告)
寝夢(プロフ) - 田無苑珠さん» もう色々とアレな人になっちゃってますねミスター・マシュー (2017年6月5日 20時) (レス) id: 0c9f17ee4b (このIDを非表示/違反報告)
田無苑珠(プロフ) - 寝夢さん» 読んでくれてありがとうございます！はい、言いましたw……と、言っても実は恋愛という意味ではなくて、本人もよく分からない感情をマーロンに抱いてるんです。 (2017年6月5日 20時) (レス) id: f9f63da005 (このIDを非表示/違反報告)
寝夢(プロフ) - 面白いです！マシュー、……あ、愛してる…って言いました……？ (2017年6月5日 10時) (レス) id: 0c9f17ee4b (このIDを非表示/違反報告)
田無苑珠(プロフ) - ロイヤルストリートさん» ありがとうございます！好きになってくれて嬉しいです (2017年5月23日 13時) (レス) id: f9f63da005 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：田無苑珠 | 作成日時：2017年5月5日 13時
