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STORY 32 ページ32

「もういい……」

 マーロンに背を向けたまま、マシューは震える声を絞り出す。

「お前が魔女でも、構わねぇ……殺さねぇよ……お前を嫌いになれないんだ……」

 それを聞いたマーロンの中で何かが切れた。

「僕は……僕は……! お前なんか大嫌いだっ!!」

 一瞬、頭が真っ白になるほど生まれて初めて本気で叫んだマーロンはマシューの背中に拳を振り下ろす。何度も叩きつけるたびに無抵抗のマシューが呻くがマーロンは何も感じなかった。

「死ねよっ!! 死んじゃえよっ!! 嘘つきっ!! 人殺しっ!! お前のせいで父さんは死んだんだっ!! 母さんを魔女に仕立て上げて……お前が母さんを殺したんだっ!! ふざけんなよクズッ!! 全部返せよっ!! 返せよぉっ!!」

 マーロンは殴るのをやめるとベッドから降りて床に転がっている針を拾ってマシューのところに戻る。この間ほとんど何も考えていなかった。

「死ねっ!!」

 思い切り左脚に突き刺すとマシューは苦痛の声をあげて身体を起こす。その左肩にも振り下ろされる。

「馬鹿野郎……こんなことしたってなぁ……戻らねぇんだよお前の両親は」

 その一言でマシューへの攻撃が止む。

「気ぃ済んだか。ほら、それ返せ」

「嫌だ」

「おい」

「嫌なんだよっ!!」

「……じゃあ持ってていい。はぁ……もう好きにしろよ」

 疲れたように言うとマーロンの目からボロボロと涙がこぼれ落ちた。

「うぅ……ひっく……うわあああん! あああああっ!!」

 そのまま自らの頭に刺そうとしたマーロンの手を慌てて押さえ、頬を張る。

「とち狂ってんじゃねぇよ。お前の親父は――」

「父さんはもう腐ってるよっ!! 馬鹿っ!! 内臓腐って死んじまえっ!!」

 マシューは少しの間黙り込む。マーロンも同じく口を閉ざす。

「……憎みたいなら憎め。忘れられるよりずっとマシだ」

「僕は忘れたいんだよっ!!」

 大声で泣き叫んだかと思うと今度は笑い出す。

「結核で死んじゃえばいいんだ! あはははは! 死んじゃえ! あはははははは!」

「ああ……分かったよ」

 マーロンは笑うのを止めてマシューを見る。

「死んでやる。でも、もう少しだけ……傍に居させてくれ……俺には、お前しか……」

 マーロンを抱きしめて涙を流す彼はどこかが壊れていた。

「どこにも行かないでくれ……愛してる……」

 だが虚ろな瞳の少年にはもう何の感情も残っていない。
 
 いつの間にか夜が明けていた。

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田無苑珠(プロフ) - 寝夢さん» ただでさえ無実の女性を平気で殺しまくってる人ですからね。どこかもう自分でもどうしようもできないほど壊れてるんです。 (2017年6月5日 20時) (レス) id: f9f63da005 (このIDを非表示/違反報告)
寝夢(プロフ) - 田無苑珠さん» もう色々とアレな人になっちゃってますねミスター・マシュー (2017年6月5日 20時) (レス) id: 0c9f17ee4b (このIDを非表示/違反報告)
田無苑珠(プロフ) - 寝夢さん» 読んでくれてありがとうございます!はい、言いましたw……と、言っても実は恋愛という意味ではなくて、本人もよく分からない感情をマーロンに抱いてるんです。 (2017年6月5日 20時) (レス) id: f9f63da005 (このIDを非表示/違反報告)
寝夢(プロフ) - 面白いです!マシュー、……あ、愛してる…って言いました……? (2017年6月5日 10時) (レス) id: 0c9f17ee4b (このIDを非表示/違反報告)
田無苑珠(プロフ) - ロイヤルストリートさん» ありがとうございます!好きになってくれて嬉しいです (2017年5月23日 13時) (レス) id: f9f63da005 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:田無苑珠 | 作成日時:2017年5月5日 13時

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