STORY 25 ページ25
「ねえマシュー、大丈夫だよ」
「クラウディアに、あの魔女に殺される……こんな……俺みたいな無能な人間なんて……死んだって誰も……」
顔を伏せたマシューの肩が震えていることに気づいたマーロンはそっと彼を抱きしめる。
「僕は嫌だよ。マシューが死んだら悲しい」
「お前の母親を殺し……俺を恨んで……」
「恨んでない。だって――魔女だったんでしょ?」
その言葉にマシューはマーロンを離す。
「マシューが殺したのは『罪のない人間』じゃない。それなら苦しむ必要はないよ」
マーロンは一息ついて続ける。
「僕は『魔女に攫われた被害者』で、死んだのは僕の母親ではなく『ただの魔女』だ」
「お前……」
「むしろ訊きたいんだけどさ……どうして『こんな僕』を心配してくれるの?」
マシューは「今更?」と言いたげだったが口には出さなかった。マーロンは自分のことを覚えていない。
「……前の町に住んでた時は本当に短い間しか話せなかった。母親から逃げるために夜になるといつも教会の階段のとこに居てさ。俺に会いに来てたと知った時にはもう遅くて……つまらなかったよ、会えない間は。お前だけだったんだ。俺を嗤わずにいてくれたのは。お前だけが、救いだった。お前は俺を覚えていないかもしれないが、俺はお前を片時も忘れたことはなかった。……おい、どうした?」
そこでマシューはマーロンが顔を覆って俯いているのに気づいて動揺する。
「マーロン? 大丈夫か?」
マーロンは泣きじゃくるばかりで何も応えない。マシューもこんなマーロンを見たのは初めてだった。
狼狽えながら少年の肩に触れると向こうから胸にぶつかってきたので慣れない手つきで頭を撫でる。
もしも未来を知る者が今のこの二人を見ていたならこう思うだろう。――いつまで『良い人間』のふりをするつもりだ、と。
*
「明日は水の審判を行うようだ。いよいよ助かる見込みはねぇな」
せせら嗤うようにそう言ってのけたジョンにもロザリアは反応せず、毛布を身体に巻きつけたまま横顔だけを見せていた。彼女だけは下着すらも与えられていなかった。
「無視かよ、おい」
苛立ったジョンはずかずかと牢に入るとロザリアの髪を掴む。だがそれだけだった。ただ彼女を怯えさせたいだけなのだろう。
「あなた結婚してるの?」
「してたまるか。開口一番にそれかよ。俺に惚れたのか?」
途端に無表情でこちらを見上げてきたロザリアに流石のジョンもかたまる。
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田無苑珠(プロフ) - 寝夢さん» ただでさえ無実の女性を平気で殺しまくってる人ですからね。どこかもう自分でもどうしようもできないほど壊れてるんです。 (2017年6月5日 20時) (レス) id: f9f63da005 (このIDを非表示/違反報告)
寝夢(プロフ) - 田無苑珠さん» もう色々とアレな人になっちゃってますねミスター・マシュー (2017年6月5日 20時) (レス) id: 0c9f17ee4b (このIDを非表示/違反報告)
田無苑珠(プロフ) - 寝夢さん» 読んでくれてありがとうございます!はい、言いましたw……と、言っても実は恋愛という意味ではなくて、本人もよく分からない感情をマーロンに抱いてるんです。 (2017年6月5日 20時) (レス) id: f9f63da005 (このIDを非表示/違反報告)
寝夢(プロフ) - 面白いです!マシュー、……あ、愛してる…って言いました……? (2017年6月5日 10時) (レス) id: 0c9f17ee4b (このIDを非表示/違反報告)
田無苑珠(プロフ) - ロイヤルストリートさん» ありがとうございます!好きになってくれて嬉しいです (2017年5月23日 13時) (レス) id: f9f63da005 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:田無苑珠 | 作成日時:2017年5月5日 13時