STORY 23 ページ23
確かに彼は殺されて然るべき人間なのかもしれない。それでも今『殺せ』と言ってしまえばそれがどんなに酷い人間だとしても自分が人殺しになってしまうだけでなく何かが壊れる気がする。反面、殺さなければ犠牲者が増えていく。
考え込むロザリアをイヴェルは不思議そうに眺めている。一体何をそんなに迷うことがあるのか。少なくともホプキンスのせいで酷い目に遭っているのは確かだというのに。むしろひと思いに殺すことは生温く思える。自分だったらあいつから何もかも奪って廃人になるまで追い詰めるのに。
「……どうせあいつはもう長くないだろうけどな」
「どういうこと?」
「さっきも見ただろう。あいつは少しずつ身体を蝕まれている。おそらく処刑された女の怨みだろうな。いずれ苦痛を伴った死を迎えることは目に見えている」
そこでイヴェルは言葉を切る。彼の視線を追うと誰かが階段を降りてくる影が見えた。
「噂をすれば本人が来たぞ」
そう言うと彼は闇へ溶け込むように消えてしまう。ロザリアはただ目を伏せてマシューが来るのを待つことしか出来なかった。
やがてガシャンと檻に手をかける音が響き、頭上から声が降ってくる。
「随分元気がないな。先程の威勢はどうした?」
答えずにいるとマシューは好き勝手に喋り続ける。
「もう、疲れただろう? お前が一言、魔女だと白状すれば休ませてやれるぞ。永遠にな」
私は魔女じゃない。何度そう言っても無駄だということは分かっていた。この男にとって真実などどうでもいいのだと。
「無視してんじゃねぇよガキが」
口調が荒くなったかと思うと彼は鍵を開けて入ってくる。そして強引に毛布を剥がすとロザリアの後頭部の髪を掴んで床に引き倒した。
「ジョンのやつ、お前を気に入ってるようだがどんな術を使ったんだ?」
ロザリアは虚ろな瞳で天井を見つめている。だから彼が空いた片手で何をしているのかは見えていない。
だが突如マシューが髪から手を離して口を塞いできたかと思うと次の瞬間、衝撃がロザリアの身体を貫いた。
「――!」
経験したことのない痛みに暴れるロザリアの手がマシューの頭に当たり、帽子が床に落ちる。その間にも奥深くまで侵入され、意味を理解した彼女は痛みと屈辱に涙を流す。
やがて口から手が離れても喋る気力はもうなくなっていた。
「もしガキが産まれたら……釈放してやるよ」
今の彼女がそんな言葉に希望を抱くはずもなく……。
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田無苑珠(プロフ) - 寝夢さん» ただでさえ無実の女性を平気で殺しまくってる人ですからね。どこかもう自分でもどうしようもできないほど壊れてるんです。 (2017年6月5日 20時) (レス) id: f9f63da005 (このIDを非表示/違反報告)
寝夢(プロフ) - 田無苑珠さん» もう色々とアレな人になっちゃってますねミスター・マシュー (2017年6月5日 20時) (レス) id: 0c9f17ee4b (このIDを非表示/違反報告)
田無苑珠(プロフ) - 寝夢さん» 読んでくれてありがとうございます!はい、言いましたw……と、言っても実は恋愛という意味ではなくて、本人もよく分からない感情をマーロンに抱いてるんです。 (2017年6月5日 20時) (レス) id: f9f63da005 (このIDを非表示/違反報告)
寝夢(プロフ) - 面白いです!マシュー、……あ、愛してる…って言いました……? (2017年6月5日 10時) (レス) id: 0c9f17ee4b (このIDを非表示/違反報告)
田無苑珠(プロフ) - ロイヤルストリートさん» ありがとうございます!好きになってくれて嬉しいです (2017年5月23日 13時) (レス) id: f9f63da005 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:田無苑珠 | 作成日時:2017年5月5日 13時