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応接室の椅子はとてもふかふかで座り心地がとても良い。前の職場のボロボロで硬い椅子とは大違いだ。ふかふかを堪能していると、向かいに座った深澤さんが笑いながら眺めているのに気づいた。途端に恥ずかしくなって、座りなおす。隣の給湯室から出てきた阿部さんが冷ややかな目線を送りながら、緑茶を淹れてくれた。暖かくて美味しい。コーヒーのいい香りが部屋を包む。阿部さんはコーヒーが好きらしい。
「ちょっと阿部ちゃん。俺の分は？」
「貴方はそこら辺の川の水でも飲んでいて下さい」
「いつにもまして酷いね！？」
「とりあえず何処から説明しようか？」
「あれ？無視された？」
「まあ、どうせ此奴のことだから何も説明していないんだろうし、最初はこの会社についてでも話そうか」
「はい！よろしくおねがいします」
阿部さんの深澤さんへの当たりの強さが少し気になったが、他の社員さんも彼ほどではないけどそうだったし、気にしたら負けだと思って、阿部さんの話に耳を傾けた。
「とりあえずここは表向きは喫茶店となんでも屋を経営してる。あ、まだ自己紹介してなかった。改めまして、Folkloreの経理をしてます、阿部亮平です。一応法律関係、社員のスケジュール調整も俺の担当」
「すごい頭良さそう……」
「ふふ、褒めてくれて嬉しいな。まあ、仕事のほとんどはなんでも屋の方に来る依頼。基本は依頼をこなしつつ、喫茶店の方で働いたり、ここで駄弁ったりしてる。定時は通常は五時。喫茶店はもっと遅くまでやってるけど、あれはほとんど舘様の趣味だから」
僕の独り言を綺麗な笑顔で受け取る阿部さん。さっきまで深澤さんに絶対零度の視線を送っていた人とは思えなかった。
「そのせいでこっちの方の仕事してくれないけど。ああ、後舘様の前で此処をカフェって言っちゃだめな。『此処はカフェでは無く純喫茶だ！』って怒られるから」
「いつもご飯作ってもらってる癖に何言ってんの。とりあえずこれが表向きの仕事。もちろんラウールは判ってると思うけど、裏の仕事もあるよ。一週間前の目黒の案件がそれだね」
「なんでそのこと……。あ、スケジュール管理してるからか」
「そう。それとこまめに仕事内容の確認はしてるからね。裏の仕事は一日一件の縛りがあるから」
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作者名：カルカンサイト | 作成日時：2022年10月2日 2時
