五日目 ページ20
五日目は結婚詐欺師の男性で担当は樹さん。依頼人のご指名……らしい。事務所を出るとき阿部さんからノートパソコンを渡された。ホテルの一室に着くと、女装した佐久間くんが待っていた。クオリティが高いが、社員さんはみんなできるらしい。思ったよりやばいぞこの会社。
「今回は大我に手伝ってもらった特別仕様だよ！」
「俺達はこういうの向いてないんだよなぁ。久々の新人だからって張り切っちゃってさ」
佐久間くんの後ろにいる京本さんの愚痴がとまらない。このような研修は初めてで、危険を伴うらしい。樹さんが昨日のは奇跡だと言った。他人の夢に入るのは難しいみたい。樹さんにパソコンを渡すと、佐久間くんと京本さんは部屋を出た。
少し待っていると、パソコンから声が流れ出した。
『マイクテスト。聞こえてる？』
『音大丈夫でやんすか？』
「聞こえてる。カメラも異常なし」
画面上部に黒い影が写り込んだ。クッションか何かを乗せたらしい。仕方ないけど、盗撮は気が進まない。
『隠れたかな。さっくん置いてそっち行くね』
「戻ってくるまで雑談でもする？」
そんなことしてるうちに標的が来てしまうのではと思ったけど、やることもないので色々聞いてみることにした。
「研修に深澤さんがいないのはなぜですか？」
「多分営業担当だから。うちは師匠が取ってきた案件を阿部ちゃんが割り振ってるからね」
「初めて知りました」
「嘘だろ。これまでの研修で何を学んできたんだ」
仕込みですかね〜。と言うと爆笑する樹さん。戻ってきた京本さんが対象見つけたよと言うのと同時に映像に男性が映った。
『お風呂入ってくるからテレビ見て待ってて』
佐久間くんの声がした。男声なのによくバレないな。テレビには砂嵐が映っている。
『このテレビ壊れてんじゃん』
不機嫌そうな男性。樹さんが指を鳴らすとテレビに古い映像が映った。かっこいい。映像には人名らしきものが流れている。ありえない名前や年齢のものばかりだ。……あれ、この名前って、もしかして。
『何だよこれ……は？』
男性が立ち上がると同時に映像が終わった。テレビは一瞬砂嵐を映し、バラエティー番組に切り替わる。
「これで研修は終わり。後片付けはやっとくから帰っていいよ」
そう言われ帰ることにした。家まで送ってくれた樹さんにお礼を言うと、笑顔でこう言った。
「明日の犠牲者はこの方々です、おやすみなさい」
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作者名：カルカンサイト | 作成日時：2022年10月2日 2時
