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「都市伝説は噂が拡散されていく過程で力を持ったものの総称。だから心霊とは関係無いのもあるよ。でも元はただの噂話だから、人間が忘れてしまえば彼奴等も消えてしまう。それを止めるためにふっかは此処を立ち上げた」
「えっと……つまり噂が実体化したのが都市伝説で、それが消えないようにするのが僕の仕事ってことですか？」
「そういうこと。だから依頼者には依頼料とは別に『担当者の怪異を広めること』を条件にしてる。ラウールの場合は目黒の怪異『くねくね』だね」
「噂されないと消えちゃうなんて生きにくそうですね」
「怪異に対してそんな感想を持った人を初めて見たな。でも話に尾ひれが付くほど強くなるから、一概に言えないと思うけど。都市伝説についての説明はこんなところかな」
「説明終わった？契約書持って来たよ〜」
僕が記入し終わると、深澤さんはもう一枚紙を渡してきた。
「これは喫茶店の方。舘様が賄い付きで雇いたいって」
「賄い付きとか羨ましい。北斗より好待遇じゃない？」
「いつも出すようにしてるけど。何年前の話してるの……」
いつの間にかドアの所に店員さんが立っていた。地下だからか良い声が少し反響して心地よい。
「喫茶店のマスターをしています。宮舘涼太です。以後お見知り置きを」
落ち着く低音の自己紹介が終わると、深澤さんから契約書を受け取り、応接室を出ていく。その姿を見ていると騒がしいはずの事務所が不意に静かになった気がした。もしかしたらこの人の周りだけ別世界なのかも知れない。
「じゃ、研修の日程決めますか。新人教育は阿部ちゃんに任せるから、ビシバシ鍛えてやって」
「お前も働けニート所長。表の方も教えなくちゃならないから一ヶ月はかかるな。実地は…最初は目黒かな。次は精神的ショックの少ない方から行くべきだよね……」
ぶつぶつ呟きながら何処からか取り出したタブレットに日程を入れていく阿部さん。ところどころ物騒な言葉が聞こえてくる。流石怪異。
「うん！こんなもんで良いかな」
「流石阿部ちゃん！お、そろそろ定時だ。じゃあ明日の九時までには此処に来てね」
「はい！明日からもよろしくおねがいします！」
こうして僕の新しい就職先が決まった。
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作者名：カルカンサイト | 作成日時：2022年10月2日 2時
