one years ago -11 ページ38
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「Aちゃん！」
廊下を歩き出してすぐに、覚えのある声に引き留められた。
振り向きたくない、一瞬そう思ってしまったけれど、身体は反射的にその声に振り返る。
「相葉さん、なにか」
笑顔を忘れないようにと言い聞かせながら相葉さんを見上げる。
相葉さんはためらうように空気を飲み込んでいたけど、すぐにまた息を吸い込んだ。
「あの……話を……話をする時間をもらえないかな」
「話、ですか？」
「うん。……仕事のあとでも、別の日でもいいんだ」
「……そう言われましても……」
急な話で戸惑う私の内心も分かりきったみたいに相葉さんがひとつ頷く。
「分かってるんだ、無茶なお願いしてるのは。だけど、君に会えたから……話をしないと後悔するって……」
「ニノが……」と相葉さんは消えそうな声で付け足した。
なるほど二宮さんの差し金かと私は納得する。
言っている自分もどこかためらうような戸惑うような、そんな顔をしている相葉さんだったけど、一度床に落ちた視線はすぐに私へ戻ってきた。
「お願い、Aちゃん」
その声を聞くだけで、言うことを聞いてあげたくなってしまう。
その祈るような顔を見るだけで、願いをかなえてあげたくなってしまう。
だって私はずっと、ずっと……泣きそうな、悲しそうな相葉さんばかり見てきたから。
いつも笑顔で明るくて、その裏でいろんな葛藤をしながら星空を見上げている相葉さんを、ずっと見ていたから。
見ていることしか……できなかったから。
だからこれは条件反射のようなもので。
私にはとても、抗いようのないものだ。
そう言い訳して。
……たぶん、今頃厨房で忙しなくケーキを作っているであろう彼に、言い訳して。
私は小さく息を吐いた。
「わかりました。……でも、今日の終わりは十一時ですよ」
「それでもいい。君を待ってる」
「っ、わかりました」
低い声はひどく真剣だ。
ざわつく心を押さえつけるように、きゅっと目を閉じて頭を下げる。
「では、ご注文すぐにお持ちいたします」
「あの、場所！」
くるりと踵を返しかけてまた相葉さんの声に足を止める。
「……チャットに入れておくよ」
「…………わかりました」
「お仕事、頑張ってね」
「……ありがとうございます」
結局、振り返ることが出来ずに足早に相葉さんの前を立ち去った。
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iCHiKA(プロフ) - 喜美さん» コメントありがとうございます！1年前の時点ではSさんとのこんな日々になっております。Aさんがどうするか、どうなるかは、もうしばしお待ちいただきますが、お楽しみいただけたら嬉しく思います。引き続きよろしくお願いいたします！ (2021年7月14日 20時) (
レス) id: ca4476f6fd (このIDを非表示/違反報告)
iCHiKA(プロフ) - ともさん» そうなんです、ちょっとわかりづらい構成ですみません。のんびりと引き続きお付き合いよろしくお願いします！ (2021年7月14日 20時) (レス) id: ca4476f6fd (このIDを非表示/違反報告)
喜美(プロフ) - 毎回楽しみにしています。おー！翔ちゃんと？いやいや、どうなるのかな…続きを早く読みたいです！ (2021年7月14日 1時) (レス) id: b4e19f43f3 (このIDを非表示/違反報告)
とも(プロフ) - あ…そーゆー事なんですね(￣▽￣;)先走っちゃいました（≧∇≦）ﾃﾍﾍ (2021年7月12日 22時) (レス) id: bd0ebe94fc (このIDを非表示/違反報告)
iCHiKA(プロフ) - ともさん» 驚かせてすみません！この年はAさんの登場まで少しあるので、今しばしお待ちください。2年前の最後にAさんとは色々ありましたしね、その後ヒロインちゃんの日々はこのように変わりました。このあとAさんがどうするかは、もうちょっと先なので見守ってください！ (2021年7月12日 21時) (レス) id: ca4476f6fd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：iCHiKA
| 作成日時：2021年6月7日 22時
