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「·····薬で抑えているとはいえ、やはり病状の悪化は免れませんね····。正直、今生きていること自体奇跡です。

いつ、寝たきりになっても不思議ではありません。」


一通りお館様の診察を終え、診断結果をお伝えする。




私は決して、診断結果を濁して伝えない。


例えそれが、どんなに残酷なものだったとしても。


嘘偽りなく、ありのままの事実を伝える。




私の父もそうだった。


そうしてしっかり患者と向き合っていた。


だから私も誤魔化さない。


立派な(父のような)医者になる為に。



「····あまり、無茶はなさりませんよう·····。」



「ありがとう、A。Aの協力があるから、私は少しでも長く生きられる。私はまだ、死ぬわけにはいかないからね。」




そう言って微笑むお館様。



起き上がるのも辛いはずなのに、その顔は微塵もそれを感じさせない。





いつも思う。


お館様は、言笑自若で、得難い人だと。



私はこれ程の人格者をこれまで見たことが無い。



お館様に、会うまでは。




「·····微力ではありますが、これからもお力添えさせていただきます。」




その後、薬を塗り、包帯を変え、飲み薬と服用上の注意を説明して私は産屋敷家を後にした。




**



「あら、A。戻られたんですね。」


「しのぶ。」


蝶屋敷に着くと、ちょうどしのぶがどこかへ出かけようとしている所だった。



「任務?」


「ええ。緊急の任務です。

·····そういえば、貴方に手紙が来ていましたよ。まぁ、もうすぐ行われる最終選別についてだと思いますが。」


「あ〜、確認しておく。行ってらっしゃい。」


「はい。」



そう言ってしのぶは微笑むと、一瞬にしてどこかへ行ってしまった。




「可愛い顔しておっそろしいわぁ·····。」





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作者名:しゃも | 作成日時:2019年9月16日 10時

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