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しのぶside
まだ日が登りきらない早朝。
那谷蜘蛛山にて鬼の討伐任務にあたり、その場で行える限りの怪我人の手当を済ませ、私はカナヲと共に蝶屋敷へ戻っていた。
「さて、あまり時間も無いですし、急がなければ。
カナヲ。アオイとなほ、きよ、すみの四人を起こして、もうすぐ怪我人が来ることを伝えてください。私はAを起こしてきます。」
カナヲが四人の寝ている部屋へと向かうのを確認し、Aの部屋へと向かう。
部屋を仕切る障子を開ければ、幸せそうに笑い、ぐっすり眠るAの姿。
「ふふふ、君は····最高の鉗子·····。」
一体どんな夢を見てるんでしょうか。
なんの夢かは分からないが、とりあえず医療器具の夢である事は理解出来た。
ブレませんね。この方も。
さて、時間もないのでさっさと起こしましょう。
彼女に慈悲も容赦もない。
耳元まで移動し、一つ深く息をすると、鼓膜が破れない程度の声を張る。
「A！起きてください！」
「ひゃい！！」
あぁ、今日は珍しく一発で起きましたね。
いつもは何回か呼ばないと起きないのですが。
「あれ、しのぶ····？おかえり·····。どうしたのこんな早くに·····。」
「はい、ただいま。
急患です。直ぐに来るでしょうから急いで準備して下さいね。」
眠そうに目を擦り、ぼーっと私の顔を見ているAに続ける。
「簡潔に状況を説明しますのでよく聞いて下さい。
蜘蛛になった人は全員、既に治療薬を投与済です。これがその成分のメモです。これで飲み薬を作ってください。怪我人も数名いるようなので、それも任せます。
では、私はこれからすぐにお館様の元へ向かわなければならないので、後は頼みますよ。」
そう言い終えると、私はすぐにお館様の元へと向かう。
懐の瓢箪からは、走る振動に合わせてちゃぷちゃぷと小さな音が鳴る。
「やれやれ、屋敷に戻るのは遅くなりそうですねぇ。」
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作者名：しゃも | 作成日時：2019年9月16日 10時
