■(3) ページ8
上手く聞き取れないクラスメイトたちの言葉に、昔を思い出して体がこわばった。
『……っ』
声が出なかった。
順番にだったらお話はできるから、とそう伝えたかったのに口は動かない。
早くどうにかしなければもっと騒ぎが広がるかもという焦りが、さらに私を追い詰めた。
そのとき、
「帰りますよ」
目の前の人垣を割ってきた若くんが、私の右手を引っ張った。
突然だったからか少しバランスを崩して、若くんにぶつかってしまう。
慌てて離れようとしたけれど、若くんに抱き寄せられた。
驚いて顔を上げようとしたけれど、若くんに阻止される。
何も見えないように後頭部に手を回されて、若くんの肩に頭を預ける形になった。
「俺をにらむのは勝手だが、この人を泣かせるようなマネはやめろ」
『……私、泣いてないよ？』
「困ってはいたでしょう？」
『そう、だね……』
クラスメイトたちに向けた冷たい声とは一転、同一人物かと疑いたくなるくらいに柔らかい声を出した若くんに驚いた。
私はそれほどまでに若くんに大事にされていたのか。
あたたかくて、くすぐったくって、笑いがこぼれてしまう。
『でも、本当に大丈夫だから離して』
「……分かりました」
しぶしぶと、だけどゆっくりと若くんは私から離れた。
くるりと振り返ると、呆然と私たちを見ているクラスメイトたち。
大丈夫、私は今度こそちゃんとできる。
『皆さん、また明日……でよろしいですか？』
情けないけれど少し声が震えて、それでもまっすぐと見渡した。
すぐにはお兄さまみたいなカリスマ性は発揮できないけれど、跡部家の一人娘として恥ずかしくないように笑う。
「……えぇ、もちろん」
『ありがとうございます。それではまた明日』
人垣の中にいた、おそらくすでに外部生のリーダー格となった子が、納得はしていなさそうだったけれど微笑んだ。
私よりもよっぽど世渡り上手そうだ。
「ほら、帰りましょう」
若くんに手を引かれる。
私は、誰かに助けてもらわなければまだ生きていけない。
私は若くんの後ろをついていく。
『えぇ、皆さんもさようなら』
多分、上手く笑えていた気がする。
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かるぴん(プロフ) - 悠莉さん！お元気そうで良かったです！いえいえ謝ることは全くありません！！そしてしてまさかの更新！？すごくずこく嬉しいです。ありがとうごさいます！これからも楽しみにしています。無理ない範囲で頑張ってください！応援してます！ (2023年3月8日 3時) (
レス) @page33 id: e2b715c702 (このIDを非表示/違反報告)
悠莉(プロフ) - かるぴんさん» お久し振りです…！前回のコメントより更新できず、すみません…更新が止まっている間も何回もお読みいただきありがとうございます…！続きも楽しみにしていただき、感謝してもしきれません…！少しだけですが更新しますので、もう少しだけお待ちください…！ (2023年3月5日 23時) (レス) id: 5c790ea34a (このIDを非表示/違反報告)
かるぴん(プロフ) - 悠莉さんお久しぶりです。お元気ですか？またまたこの作品を読み返していました。何回読んでも面白くて読む手が止まりません(笑)この作品と悠莉さんの大ファンです！続きがありましたら是非読みたいです！ (2023年2月15日 15時) (レス) @page32 id: e2b715c702 (このIDを非表示/違反報告)
かるぴん(プロフ) - 悠莉さんお元気そうで安心しました😌お忙しい中返信していただきありがとうございます！いつまでも楽しみに待ってます🙋♀️これからもお体に気をつけてお過ごしください☺️ (2022年5月19日 3時) (レス) id: e2b715c702 (このIDを非表示/違反報告)
悠莉(プロフ) - かるぴんさん» 返信が遅くなり、すみません🙏かるぴんさんお久しぶりです…！続きを楽しみに待っていただきありがとうございます…！気が付けば1年以上お待たせしていますね…私生活に慣れて落ち着いたらまた書き始めたいと思うので、今しばらく待っていただけると嬉しいです…！ (2022年5月18日 21時) (レス) id: 5c790ea34a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：悠莉 | 作成日時：2020年10月5日 20時
