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お兄さまと国光さんの試合も互角の戦いであった。
ついに、タイブレークに突入する。
2人とも確かに強い。
どこに打っても返してしまう。
ほんの少しのミスが命取りとなる試合。
だけど、私の知っている姿に比べると“まだ”弱い。
これまでは本気を出すほどの相手ではなかったから、数々の技は封印していたのかと思っていた。
だから、おかしいと思わなかった。
否、目をそらし続けてきた。
違和感はずっと昔からあった。
前言撤回。
蓮二さんの裾を引っ張る。
『れんじさん、くにみつさんのとくいわざをしっていらっしゃいますか?』
「おや? 俺とは口を利かないんじゃなかったか?」
『それは……ごめんなさい』
クスクスと笑う蓮二さんに、素直に頭を下げる。
俺も意地悪だったな、と頭を撫でられた。
誰かに頭を撫でられるのは久しぶりで、蓮二さんの手が離れると、つい撫でられたところに手を重ねてしまった。
『れんじさんっておおきいんですね……』
「Aに比べればな」
いえ、一般的にも大きいと思います。
と、話はそれてしまったものの、蓮二さんは国光さんについて話し始めてくれた。
国光さんは立海ではないからだろうか。
だから、集めたデータを教えてくれる。
「青学の手塚国光と言えば、“零式ドロップ”に“零式サーブ”だな。特に零式サーブを出されると、当然ながら勝ち目はない。それは今の試合でも分かるだろう?」
『……えぇ。サーブがはねないなんて、うちかえせるはずがありませんものね』
「跡部も似たような技を持っていたな」
『そんないいかたをされなくても、わたしだってしっていますよ。おにいさまのタンホイザーサーブが、くにみつさんのぜろしきサーブにおとっていることは』
感情を交えずに答えた私に、蓮二さんはそれ以上言葉を続けなかった。
国光さんの零式サーブとは違い、お兄さまのタンホイザーサーブは微かに跳ねて返球可能である。
それに国光さんも、お兄さまも、全てを零式サーブとタンホイザーサーブで戦っているわけではなかった。
腕に大きく負担がかかることから、お互いに数を制限されている。
それでも、ラリーは続き、試合は簡単に終わらない。
国光さんがわざと手を抜いているわけではないのなら、私は今日まで一度も“手塚ゾーン”も“手塚ファントム”も見たことがなかった。
蓮二さんの口からも出なかったということは、“まだ”国光さんもその技を使えないのかもしれない。
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悠莉(プロフ) - I like choco さん» 休んでいた間に書き溜めていたおかげです(笑)ですが、お話のストックも尽きてしまったため続編はお待たせしてしまいます…無理はしませんが、ご心配ありがとうございます! (2020年9月30日 22時) (レス) id: 5c790ea34a (このIDを非表示/違反報告)
I like choco - 更新早いのすごい嬉しいです!ただ、無理はしないでくださいね! (2020年9月30日 21時) (レス) id: 21ebe68129 (このIDを非表示/違反報告)
美麗 - 更新ありがとう。ちょっと遅くなってごめんなさい。拝見しました面白いかったよ。 (2020年9月4日 0時) (レス) id: da294cd674 (このIDを非表示/違反報告)
美麗 - 返事有難うございます。まぁ見えないのはありますが どことなく分かりますので大丈夫です。テニプリは大好きです。最も好きなのは青学 氷帝 立海 四天宝寺 六角かな何かさテニスの王子様ってさ夢見る乙女感じだよねぇ。ずっと応援しています頑張って下さいねぇ。 (2020年9月3日 20時) (レス) id: da294cd674 (このIDを非表示/違反報告)
悠莉(プロフ) - 美麗さん» ゲーム機からだとページの読み込みとか大変ですよね…それでも私の作品も選んでいただけてとても嬉しいです♪応援もありがとうございます!更新頑張りますね! (2020年9月3日 20時) (レス) id: 5c790ea34a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:悠莉 | 作成日時:2020年5月16日 0時