□(21) ページ13
呆気にとられて目を瞠り、目の前の現実から逃避して忍足さんに思いを馳せる。
朝の会から嬉しそうだった忍足さんの姿を思い出して、胸が痛んだ。
なるべくお兄さまを刺激しないように、どうしてそうなったのかを聞きたいけれど、怖くて聞けない。
冷や汗が流れるのを感じながら、声を震わせないようにするのが精一杯だ。
『お、おにいさま〜……さすがにそれはおうぼうでは?』
「仕方ねーだろ、おまえら以外は俺様の顔を見て泣き出すんだからよ」
呆れたように返ってきた言葉に、私はすぐに納得してしまった。
むしろ私のせいだった。
お兄さまの職場体験がままならないから、と先生から謝られて、いっそ妹の私がいるクラスの担当に変わってもらったそうだ。
最初はじゃんけんで決めたそうだけど、想像以上に園児たちが泣いてどうしようもなかったそうで。
でも、それだけでは若くんと仲良くなった理由が分からない。
2人が繋いでいる手を見続けていると、その視線に気がついたからか慌てて若くんがお兄さまと手を離そうと腕を振り回した。
お兄さまは面白いものを見つけた、とでも言いたそうに口の端を上げる。
あぁ、嫌な予感。
『そういえば!!! おにいさまとわかしくんはどうしてきゅうになかよくなったのですか?』
お兄さまが余計なことを言って若くんをからかう前に、疑問を解決しちゃいましょう。
ヘラリと笑って尋ねれば、3人は顔を見合わせてコクンと頷いた。
「秘密だ!」
「おとこのやくそくです」
「おまえのことでだよ」
上から順番にお兄さま、若くん、悠斗くん。
見事に息が合っていなかった。
一斉に、みんなの視線が口を滑らせた悠斗くんに集まる。
「……わるい!」
顔の前で手を合わせてそう叫ぶと、悠斗くんは私たちの前から逃げ出した。
逃げ足が速いなぁ、とのんきに見送る私の両腕を、顔を真っ赤にした若くんが必死に掴む。
「ちがっ……うくはないんですが、ちがいますからね!?」
『おにいさまにてをはなしてもらえてよかったねー』
「そうでもなくて……そうじゃないんですよ!」
『だいじょうぶ! わたしはなにもきいていないから!』
「それ、きいたひとのセリフじゃないですか!」
『そんなことよりも!』
笑って押しきってしまえ!
『わかしくんとおにいさまがなかよくなってわたしはうれしいよ!』
「「なかよくはなっていない!」」
今度は息ピッタリの2人に笑いがこぼれてしまった。
仲良しさんだと思うんだけどな。
139人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「テニスの王子様」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
悠莉(プロフ) - I like choco さん» 休んでいた間に書き溜めていたおかげです(笑)ですが、お話のストックも尽きてしまったため続編はお待たせしてしまいます…無理はしませんが、ご心配ありがとうございます! (2020年9月30日 22時) (レス) id: 5c790ea34a (このIDを非表示/違反報告)
I like choco - 更新早いのすごい嬉しいです!ただ、無理はしないでくださいね! (2020年9月30日 21時) (レス) id: 21ebe68129 (このIDを非表示/違反報告)
美麗 - 更新ありがとう。ちょっと遅くなってごめんなさい。拝見しました面白いかったよ。 (2020年9月4日 0時) (レス) id: da294cd674 (このIDを非表示/違反報告)
美麗 - 返事有難うございます。まぁ見えないのはありますが どことなく分かりますので大丈夫です。テニプリは大好きです。最も好きなのは青学 氷帝 立海 四天宝寺 六角かな何かさテニスの王子様ってさ夢見る乙女感じだよねぇ。ずっと応援しています頑張って下さいねぇ。 (2020年9月3日 20時) (レス) id: da294cd674 (このIDを非表示/違反報告)
悠莉(プロフ) - 美麗さん» ゲーム機からだとページの読み込みとか大変ですよね…それでも私の作品も選んでいただけてとても嬉しいです♪応援もありがとうございます!更新頑張りますね! (2020年9月3日 20時) (レス) id: 5c790ea34a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:悠莉 | 作成日時:2020年5月16日 0時