〇3 ページ3
.
翌朝。
昨日まで咲いていた桜は、
雨に濡れて花びらが落ちていた。
たった数十時間で
季節は簡単に変わってしまう。
そんなことを教えられているみたいだった。
窓からの景色を見ていると、
そんな悲しい情景を、覆すほどの驚きがやってきた。
「すみません、遅れました！」
突然教室に入る男性の声。
何か聞き覚えのある声を感じて、
窓から視線を移動させると、
「おい龍我〜、遅刻するなら昨日も来いよ」
その人はクラスの誰かから、
ノリと勢いでツッコまれていた。
それに対して、
“むり〜”と後頭部をかきながら笑顔を向けるこの男子は、
私の“幼なじみ”、佐藤龍我であった。
生まれた時から隣の家。
両親同士の仲が良かった私たちは、
幼少期からお互いの家に行っては頻繁に遊んでいた。
だけど、小学校を卒業する際、
父の単身赴任に着いて行った私は、
中学だけ地元から離れてしまった。
それでも、私と龍我は10年以上、一緒にいた仲。
そんな私たちは小学生から高校生になった。
たった3年間で、
龍我は背がぐんと高く、違う人みたい。
知らない同級生と喋っている姿は、まるで他人。
何故か私は、窓の景色から見える、
雨に濡れて散った桜のような気分。
龍我が席に着くと、
待っていたかのようにHRのチャイムがなった。
先生が教壇に立ち、
お決まりのフレーズを流暢に話し始める。
この瞬間は、私を含めてクラスの皆が
“はいはい”とつまらなそうに聞いていた。
だけど、次に発せられた言葉は、
私の心がハッとして、
クラスの皆は目を輝かせるような事だった。
「えー4月末に、この学校恒例の林間学校があります。
えー、いつもの事なので分かると思いますが、
4人グループはこちらで作りました。」
……はい？
いつもとか恒例とか知らないです！私。
それに、グループを勝手に決めた……は
まぁ助かるか。
友達いないし…。
だけど、
顔見知りの中に入るのもどこか気が引ける。
“私と同じような境遇の子がグループに居ますように”
そう願うしか無かった。
そして、
私の席に組み合わせが書かれた紙が回ってきた。
恐る恐る紙を開くと、
佐藤龍我
八代ヒナ
岩��大昇
高橋A
この4人が同じグループに記載されていた。
……龍我がいる。
正直、顔見知り3人の所に放り込まれるよりも、
龍我が居るグループの方が遠慮したかった。
「え！Aいるの！？」
だって、気付かれるから。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 130人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
うさぎ(プロフ) - 初めまして！小説の雰囲気が素敵です。久々に美少年の作品を探してたので良い作品に巡り逢えた気がします！これからも応援してます！自分も美少年の作品を書いてるので参考にさせていただきます。 (2022年11月3日 19時) (
レス) @page6 id: 80a86bf48f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ホワイトチョコ | 作成日時：2022年10月17日 23時
