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Aside





大昇「A……聞いて欲しい。」





いつものように手を握りつつも、





私を見つめるその視線は





逞しいようで、どこか力が弱かった。





大昇「………今日」


『はいはい、待って!』


大昇「?」


『……大昇くん、さっきから手が震えてる』





私に何か伝えようとするその手は、





小刻みに小さく震えていた。





『あのさ……大昇くん』


大昇「……違うよ、」


『……私、』


大昇「……そうじゃない、」


『…今日………死ぬんだよね?』





そう言い放つと、





大昇くんとは目が合わなくなった。





顔を下に背けて、





視線を逸らす。





大昇「……違う、そうじゃない」





弱々しい声で否定する。





『違わない、そうだよ』


大昇「……」





私の憶測は、どうやら正解のようで、





『……気づいちゃった…』


大昇「…」


『何回も……何回も』


大昇「……違う」


『私を…助けようとしてくれたのは……』


大昇「………違う!」






『今……目の前にいる…大昇くんなんだよね……』





その瞬間、





スっと、一滴の雫が床に落ちた。





分かりやすく頬に伝う涙。





初めて見る大昇くんの泣く姿。





『ねぇ、大昇くん…今日が……』


大昇「……違う」


『私の、その日……なんでしょ?』





今日が、私の死ぬ日。





ハッキリと口に出すと





体の奥底から恐怖で埋め尽くされる。





大昇くんと、過ごせる毎日が、





今日で終わる。





明日からは、





目を合わすことも





手を繋ぐことも





キスをすることも





好きという気持ちを伝えることも





……できない。





その未来を考えると





すごく嫌で嫌で嫌で





涙が流れてきた。





『私……本当に……死んじゃうのかな』





なんとなく、そう感じた時から





見て見ぬふりをしてきたけど、





目の前の大昇くんを見る限り





事実だって、教えられているような気がする。





『私、来年も再来年もこの先ずっと……大昇くんといたいよ……』





ボロボロと溢れ出る涙。





『大昇くんが、好きで大好きでたまらなくて……』





今伝えたい気持ちが全部言葉に出る。





『……死にたくないよ…。』





その時、強くぎゅっと抱きしめられた。





大昇「だから、一緒に未来へ行こう」


『え……?』





そして、





私たちは屋上から落ちていった。




.

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作者名:ホワイトチョコ | 作成日時:2022年8月13日 0時

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