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母からの電話があった次の日の朝。
私は、また早く起きてお弁当を作っていた。
トントンとリズム良く野菜を刻む音。
グツグツと泡を立てる煮物。
卵焼きも人参もハートにするのはもうやめた。
ただ一世の健康だけを考えたメニュー。
お弁当箱の中に盛り付けて、気持ちと一緒に蓋を閉じた。
『よし、今日も完璧っ』
いつものように玄関におく……じゃなくて
今日は直接渡そうと思ってる。
玄関の前に立ち、インターホンをそっと鳴らす。
数秒時間が経ってから
まだ少し眠そうな一世の声がその先から聞こえた。
『あ、おはよう!お弁当、作っちゃった、笑』
私だとわかり、
ガチャとドアを開けたTシャツにスウェット姿の一世。
『昨日までのお弁当……ごめんね!変なことして…。
. でも、私は一世のお弁当を作っていたい。』
自分の気持ちを抑えたまま、この言葉を伝えた。
「……俺もごめん。ありがとう」
そう言って、私が持ったお弁当を
ひょいと受け取ってくれた。
嬉しい気持ちが込み上げてくる。
『うん!今日も頑張れ!』
登校するにはまだ少し早い時間。
私は家の中に戻って、
ダンボールに荷物を少しづつ詰める用意をしていた。
昨日、お母さんに言われた最後の一言。
“1週間後、迎えに行くから”
それはあまりにもタイムリーなこと。
そして、その日は一世の予選大会と同じ日だった。
電話越しの事実に、動揺が激しくなる。
最後まで全力で応援したいって思ってたけど、
それが叶わなくなった今、
私が出来ることは……
残りある時までお弁当を作ること。
絶望を感じたけど、
それを私がネガティブに捉えちゃダメだ。
私がポジティブでいないと、一世まで影響が出てしまうかも。
だから、
1週間後、幼なじみをやめることは一世には内緒。
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しゅうか(プロフ) - 初めまして。読みながら号泣してしまいました。素敵なお話ありがとうございます! (2022年6月28日 13時) (レス) @page37 id: 81d3bec9f9 (このIDを非表示/違反報告)
ホワイトチョコ(プロフ) - ^_^さん» 大昇どこいった (2022年6月20日 3時) (レス) id: 5af4654439 (このIDを非表示/違反報告)
^_^(プロフ) - サイコーっす那須最高っす (2022年6月20日 2時) (レス) id: 3634040f38 (このIDを非表示/違反報告)
ホワイトチョコ(プロフ) - ぎゃうさん» う、う、嬉しい……( ꒪⌓꒪) (2022年6月16日 22時) (レス) id: 5af4654439 (このIDを非表示/違反報告)
ぎゃう - 最初から最後まで改めて読んだけど、まじで好き〜あの下駄箱の飛貴の匂いめちゃくちゃ想像できる。美少年浮所飛貴の匂いじゃなくて一般人浮所の匂いがち好きすぎる。あといせちゃんが怒ってお弁当やめてとかハートに気づかない鈍感で恋愛ならしてない感じがいせちゃん (2022年6月16日 16時) (レス) id: 38302e75f7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ホワイトチョコ | 作成日時:2022年6月10日 0時