もしもこの恋が出来たなら

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「これ貰っちゃおうかな」





急に、
隣からスっと、卵焼きに向かって手を出してきた。





手…、近い。





カーディガンの袖におかずが付かないよう
袖を軽くまくって露わになった腕。





それが目の前を通る。





血管の筋が通った、少しゴツっとした腕。





だけど、指先にかけて細く繊細に。





那須先輩の腕に息がかからないよう
ぐっと息の根を止めた。





「これうまいね、卵焼き甘口派？」





そんな緊張感も知らずに呑気なセリフ。





隣で口を大きく動かしながら卵焼きを食べていた。





人の気も知らないで……




『甘いの好きですよっ、先輩はどっちが好きですか？』


「んー」





簡単な質問に対して、那須先輩は、
両腕を大きく組み、わざとらしく考える様子。





「ケチャップかな笑」


『どっちでも無いじゃないですか！』


「俺が好きなんだからいいじゃん」





那須先輩は、優しいと思ってても





ふとした時に、わざとふざけたり距離を感じることを言う。





曖昧で、絶妙な距離の縮め方。





そんな事しなかったら、
ちょっと悲しく思ったりしないのに。





そういや、





昨日が初めましてにも関わらず
ほどよく絡んでくれる先輩は、





きっと、こんな所に来なくても学校の人気者だと思う。





なんでわざわざこの階段に？





…意外に、私と同じで友達いないとか？笑





まぁそんな訳ないか。





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