幸福論 =4=

Episode.143 ページ1

ネアポリスまでは随分と遠かった。ジェノヴァからいくつかの都市を経由し、ようやく到着だ。とはいえ浮かれてもいられない。これも仕事であることに変わりはないと忘れるな。そう言い聞かせて、とりあえず腹ごしらえでもしようと例の美味しいお店へ入店した。……仕事をするために食べるのだから、別に決して楽しんでるワケではない。

運ばれてきたそれを見て、ウェイトレスの女性にグラッツェと一言伝えてから手をつけた。イタリアのパスタは本当に美味しい。特にここのお店の味付けはしつこくなくて食べやすい。


｢そういえば、以前も来て下さってましたよね。ブチャラティさん達に御用とか？｣

｢ええ、まぁ。ただどこにいるかまでは知らなくて｣

｢ああ、それなら今日は、隣の通りにあるピッツェリアだと思いますよ。来ない時は大抵そうです｣


食べ終えた皿を取りに来たウェイトレスと世間話をしていたら、思いがけずブチャラティ達の居場所を聞くことができた。やはり、食べることもまた仕事なのだ。本当に美味しくて、もちろんチップも置いていく。絶対また来ようと心に深く誓った。


｢隣の通りの、ピッツェリア……あれかな｣


細い路地を通って隣の通りに出ると、そこもまた同じように活気に満ちていた。ここはいつ来ても明るい良い街だ。治安が比較的良いのはブチャラティ達のおかげだと以前聞いたし、そんなブチャラティが何故ギャングになったんだろう。

……なんて、人のこと言えないか。

ブチャラティのことを考えて、自分なんて違う国から来てわざわざギャングなんてものになっている物好きなのかもと苦笑する。まぁ、それで幸せなのだから別にいいんだが。

カランコランとベルが鳴る。中は騒がしく、その声には聞き覚えがあった。その内の一人とばっちり目が合ったので軽く手を振って歩き寄る。一人、また一人とAの存在に気付いていった。


｢チャオ、久しぶり｣

｢チャオ、A。だが驚いたぜ、また観光でもしに来たか？｣

｢私も観光で来たかったんだけど、残念ながらお仕事なんだ｣


その言葉にブチャラティは顔色一つ変えなかった。彼はAの仕事が何であるかを知っているはずだ。だからこそ逆にそれが不自然で、Aはイニシアチブをとったまま話しを続けた。


｢仕事って言っても暗殺じゃないんだけどさ。情報収集とか、そういう感じ｣

｢なるほど。それで、何が聞きたい？｣









(さすが)

(でも、問題はここから)

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